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ムラサメデザイン · Aug 10, 2026

褒められた方向に進んだら、迷子になった

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ムラサメ | 伝わるデザイン・ディレクター · ムラサメデザイン

How to create an Outline #5

仕事がうまくいっている。
評価されている。
依頼が来る。

なのに、どこかで「これは自分の仕事か?」という感覚が浮かんでしまう。
成功と迷子が、同時に存在する。

その奇妙な状況を、この記事では観察します。

「夜の仕事」のグラフィックを請け負っていた時期があります。

価格を抑え、スピードで応える。
その姿勢が評価され、どんどん仕事が増える。
「またお願いしたい」「ウチもお願いします」という声がしばらく続きました。

褒められることは情報です。
「この方向が正しい」という外部からのシグナル。

シグナルが強いほど、次も同じ方向に進みます。
また評価される。
さらに深く進む。

この繰り返しは合理的に見えます。
気づかないうちに「褒められるために作る」が、「作りたいから作る」をゆっくり上書きしていきました。

その仕事を続けていたある日、知人から別の依頼が来ました。
内容は子育て相談所のWebサイトやパンフレットなど。
規模も予算も、夜の仕事関連とは全く違います。

そしてしばらく手を動かしていると、何かが戻ってきた感覚がありました。

言葉にするのは難しいですが、クリアに「この人に届く」という確信。
夜の仕事とは違う、先が見える感覚でしょうか。

私が役に立ちたいと思える人へ向けた感情が戻った時、初めて気づいたんです。
夜の仕事関連を手掛けている間、その感覚がずっと薄れていたことに。

迷子は、別の場所に立ったときに初めて発覚します。

進んでいる間は見えないもの。
褒められている最中は特に見えません。

前職の制作会社で、Webデザインの「かっこいい」が評価されました。

求められた。
その方向に応え続けた。
クライアントの反応は良かった。
社内でも認めらるようになった。

そんなある日、とある案件で、実際のユーザーの反応の低さを目の当たりにしました。

その数字を見た時、「かっこいい」という言葉の意味が一瞬分からなくなりました。
評価されてきたものは何だったのか?

ここから自分の制作の方向性について考え出します。

褒められた方向が、正しい方向とは限りません。
そもそも何が正しいなんて、境界は自分の中にしかありません。
その事実を数字が無常にも示したんです。

夜の仕事と制作会社の話。

気づき方は違います。
一方は、別の仕事が鏡になった。
もう一方は、結果という壁にぶつかった。

でも構造は同じ。

外側の評価を地図にして歩き続けたとき、ある日「自分はどこに行きたかった?」という疑問に答えられなくなっていました。

地図はある。
実績もある。
依頼も来る。

それでも迷子になりました。

コンパスは、強い磁石の近くでは正確に動きません。
引力が強いほど針は狂ってしまいます。
そして狂っていることにも気づかなくなっていくんです。

迷子の正体は、道を間違えたことではありません。
自分がどこに向かいたかったのかを参照しなくなったことです。

磁石から離れたとき、コンパスは静かに本来の方向を指し始めます。

鏡が現れたとき。
壁にぶつかったとき。
あるいは、褒められた仕事とは全く違う仕事を久しぶりに手がけたとき。

その時、針がどこを指していたかが遡って見えてきます。

ずっとそこを指したかったのか?
それとも磁石に引き寄せられていただけだったのか?

その答えは、針が戻った瞬間にしか分からないんです。

シリーズ「輪郭の作り方」一覧はこちら(PCのみ)


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