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MeThreee · Aug 16, 2026

#215:すべてが「三合一」していく中国

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MeThreee[ミースリー]は、「次の時代の社会/働き方」を読み解くためのニュースレターです。

Gryffinbit / Unsplash

すべてが「三合一」していく中国
Eel, Caviar and Electricity: China’s Answer to Guns, Germs, and Steel | Baiguan (Aug 11)
中国では農業もサービス業も、工場のロジックで動きはじめている。そう論じるのは、中国の大手医療企業で経営幹部を務める匿名の書き手だ。統計上の第一次・第二次・第三次という区分はそのままに、その中身が第二次産業の手法へ寄っていく。書き手はこれを「三合一 (three-to-one convergence)」、つまり三つの産業が一つの論理に収斂する事態と呼ぶ。たとえばウナギ。かつては日本向けの輸出品で、漁村では獲れても家族の食卓に上らなかったが、いまは専門店が成り立つ外食カテゴリーである。稚魚の育成から物流までの各工程が同時に成熟した結果だ。湖北省宜昌市はチョウザメ養殖の拠点で、キャビアの生産は1日約200キログラム。冷水を好む魚のために、循環と監視の装置が河川の条件を再現する。市内の高齢者施設では介護ロボットが働き、医療でもオンライン診療と薬の宅配が、窓口と待ち時間に散らばっていた作業をつないだ。自然や人手に任されていた工程を、装置と数値で管理できる形に分解し直す。そして分解された工程は、例外なく電気で動く。この国の発電量は2000年に世界の1割未満だったが、2024年には約3分の1を占め、米国、EU、インド、日本のどこよりも大きい。工場の数ではなく、工場の外を工場化できる電力の厚みが、産業競争力の根底にある。

深夜1時の「面接」
The Rise of the 1 am Job Interview | WIRED (Aug 10)
米国の AI 採用ソフト Ribbon を導入している500社超のデータによると、AI による面接の24%が午後10時から午前2時という深夜帯に実施されている。製造業に限ればその割合は35%に達する。採用プラットフォームの Greenhouse でも、音声エージェントを介した面接の15〜20%が夜間に行われているのが実態だ。面接官が人間でなければ、工場の稼働音が静まる深夜や、子どもを寝かしつけた後の時間帯を選んで応募できる。一方で、米国の応募者の38%は、AI 面接を受けるくらいならと選考自体を辞退しているという。AI 面接は、採用の時間を広げる。だが、利用するのは単に新技術を好む人ではない。日中の勤務や育児を動かせない人にとって、深夜は数少ない空き時間でもある。

24時間営業の「労働文化」
Meet Me at the AI-Insurance-Startup Café | Curbed (Jul 29)
ニューヨークには銀行が運営するカフェが既にいくつもある。次に出店するのは AI 企業だ。3億7,800万ドルを調達したサンフランシスコの保険スタートアップ Corgi は、マンハッタンに3店舗を計画中で、最初の店はノマド地区に24時間営業で開く。2026年2月に本社で始めた1号店の看板文句は「世界で最も偉大で影響力のある仕事は止まらないから、24時間開いている」。26歳の共同創業者ニコ・ラクアは、社員に週7日の勤務を課していると取材に答えた。メニューには他の AI 企業の名を冠した飲み物が並ぶ。ニューヨークでは犬をカフェに置くことは違法だが、週7日24時間働く従業員なら置ける、と同誌の記者は書く。

「分身」が本人より働く
Some of tech’s CEO suite is cloning itself with AI. What happens next? | BBC (Aug 12)
数分の映像があれば、対話できる分身が作れる。ホログラム企業 Proto Hologram 創業者の分身は展示会で自社を説明し、顧客企業の分身は米国の空港で140言語の案内をこなす。アバター企業 Heygen 共同創業者ウェイン・リャンも初期の商談対応を自身の分身に任せているが、育児休業のあいだに、その分身は存在しない企業向けプランを客に示していた。2023年には配信者の作った分身が性的な会話へ誘導する挙動を示し、本人が停止している。英国のエンジニアリング企業 Arup では、幹部を装った映像通話に欺かれた社員が2,500万ドルを送金した。姿や声の複製は簡単だが、一度手を離れた分身の挙動をどこまでコントロールできるかは、事前の予測が難しい。

摩擦欠乏」という新しい格差
A Chatbot-Free Childhood Will Be a Status Symbol | The Atlantic (Aug 7)
19世紀末に始まった食品の工業化は、寿命を延ばしたのち、報酬系に合わせた超加工食品を生んだ。CDC の調査によれば、米国人が1日に摂取する熱量の55%が超加工食品由来で、1歳から18歳では62%近い。そしてその害が知られると、高所得層が先に離脱し、有機や低加工の食品はステータスシンボルとなった。研究者のダナ・サスキンドは、生成 AI に歴史の反復を見る。彼女が案じるのは、誤解も間や言い直しもない AI との対話が、子どもの発達に必要な摩擦を取り除くことだ。既にその非対称は現れている。ピュー研究所の調査では、低所得世帯の10代のほうが宿題にチャットボットを頼る割合が高い。人間の応答が、有機食品と同じ位置に移りつつある。

何も届かない「ドーパミンサイト」
South Korea’s ‘dopamine sites’ let you shop, order food, and spend nothing | Mashable (Jun 23)
買い物や出前の手順だけを再現し、支払いも配達も起きない「ドーパミンサイト」が、韓国の若年層に広がっている。偽の出前アプリ FoodNeverComes では、店を眺め、注文を細かく指定し、確定し、配達員が近づく画面まで見られる。料理は永遠に届かない。開発者マルヒの着想は、深夜に空腹でもないのに出前アプリを開いては閉じる自分の癖からきた。喫煙の休憩だけを再現したサイトもある。臨床心理学者ガブリエル・シュライヤー=ホフマンは、買い物や注文から得られる感覚だけを取り出す試みだと説明したうえで留保を付す。金は使わないが行為そのものは続いており、なぜその行為に向かうのかは手つかずのままだ、と。依存を生むよう設計されていたのは商品ではなく、買うまでの過程だった。それだけを取り出しても成立してしまう。

「規則」を撤回できなくなった東京
Oooohhh Summer, How Much Risk Is a Useful Amount of Risk? | Roden (Aug 4)
人口減少や円安、観光客の急増を経て、東京は2000年当時よりはるかに規則の多い都市になった。7月の鎌倉の花火大会は、波が高いという理由で45分の予定が短縮され、10万人が集まった浜辺に上がった低空花火はわずか12発だった。代々木公園ではローラースケートやキャッチボールを禁じるアナウンスが流れ続けている。同じ月のニューヨークでは独立記念日の夜、街角やビルの屋上から無許可の花火が打ち上げられ、その火移りでブルックリン橋の一部が焦げた。26年間両都市を行き来してきたクレイグ・モドは、「集団的社会リスク (Collective Societal Risk)」の許容量が高い社会ほど、生活や商いや芸術的表現が街頭ににじみ出ると語る。一度定着した規則は市民に依存を生み、撤回が難しくなる。安全があるから挑戦できるという前提は、いまの東京では反転している。

ゴルフ場は「誰の芝生」か
How Much Space Should Golf Get in a Growing City? | Bloomberg (Aug 6)
シドニーの人口は、2041年までに28%増えて630万人に向かう。集合住宅が増え、庭のない住民が増えるほど、共有の緑地に負荷がかかる。州政府は公営18ホールのゴルフ場 Moore Park を公園に転換する。しかし誰もが安く回れる公営コースを潰すな、という署名は3万2000を超え、政府は当初の9ホール残す案を12ホールに変更した。緑地の総量は増やせない。OECD 諸国の研究では、都市の人口密度が10%上がると樹冠被覆率は2.9%減る。だからひとつの緑地に複数の役割が集中する。公園と運動施設は別の必要を満たすのに、木と芝があるというだけで奪い合わされている、とシンクタンクの代表は言う。娯楽のための芝生と、都市を冷やす設備。同じ広場が今、2つの異なる大義名分のもとで引き裂かれている。

3000年前の「自動化の夢」
The Odyssey as tech criticism | Blood in the Machine (Aug 7)
ホメロスの『オデュッセイア』には、舵手なしで目的地を知る船が出てくる。舵取りを指すギリシャ語「キュベルネーテース (kybernētēs) 」は、のちに人工知能へ連なる学問サイバネティクスの語源になった。自動化への欲望は、3000年前の詩にすでに書かれている。テック批評家のブライアン・マーチャントによれば、クリストファー・ノーランによる映画化は、この詩に疑いをはさむ作品になった。映画のオデュッセウスはトロイの木馬を考案した者であり、旅人をもてなすという規範を自らの発明で壊したことに苦しむ。監督自身、携帯電話も電子メールも使わない人物で、AI を「誰もがギリシャ兵が中にいると知っているトロイの木馬」と呼んだ。人間の欲望を描いた最古の詩が、技術批評として興行の最前線に躍り出ている。

孤独を分けるのは性別ではなく「所得」
America’s Loneliness Trap | Slate (Aug 13)
米国で語られ続ける「男性の孤独の流行」に、統計の裏づけは乏しい。差が出るのは所得である。KFF の調査では、世帯年収4万ドル未満の成人が頻繁な孤独を報告する割合は、9万ドル超の世帯の約3倍だった。

CRE 変革に足りないのは「スキル」
The future of work survey 2026 | JLL (Jul 14)
不動産サービス大手 JLL の調査で、企業不動産の変革を阻む最大の要因が、15年間の調査史上初めて予算からスキル不足に入れ替わった。足りないのは AI と分析の人材である。78%が AI は今後3〜5年の不動産戦略を大きく左右すると答えたが、最適化の段階に達している組織は15%にとどまる。

Terafab:SpaceX / Tesla がつくる人類最大の建造物
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【執筆】[WORKSIGHT] “箱”ではなく文化のOS:「木」と「学芸員」で多世代交流を生む「東京おもちゃ美術館」の制度設計
【執筆】[WIRED] 「経験の逆襲」という誤読|FUTURE of WORK
【更新】[ワークプレイス採集学] ブックガイド01:拾う —— 誰が路上のものを拾いあげてきたか

先日、『Backrooms』の試写に参加しました。誰もいない、蛍光灯の雑音が響く黄ばんだオフィスのような空間をひたすらさまよう作品です。不気味でありながらどこか懐かしいあの場所には、デスクも絨毯も配置されているのに、人間だけが存在しません。過去の文化や社会の断片が亡霊のように現在に残り続ける現象を「憑在論 (ホントロジー) 」と呼びますが、あの不気味な空間は少し違った感情も呼び起こします。かつて存在した過去ではなく、「あり得たかもしれない無人の未来」が用意されているような感触です。今号で取り上げた記事を振り返ると、深夜1時に行われる AI 面接や、不在の本人に代わって商談を進めるアバターなど、どれも人間の不在をシステムで埋める試みばかりでした。過去の残像に取り憑かれるのが恐怖なら、人がまだそこにいるうちから、システムが先に無人の世界を形作り始めている現状もまた、なにか不気味さを孕んでいる気がします。

Read the original on methreee.substack.com

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