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MeThreee · Aug 9, 2026

#214:「ナイーブ・シニシズム」という偽装

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MeThreee[ミースリー]は、「次の時代の社会/働き方」を読み解くためのニュースレターです。

Kelly Sikkema / Unsplash

「ナイーブ・シニシズム」という偽装
Cynicism and Naïveté in the Summer of a Thousand Fires | Meditations in an Emergency (Aug 5)
レベッカ・ソルニットによる論考。気候をめぐる無力感の多くは、「どうせ他の人は関心がない」という前提から生じている。だがその前提は、データによって崩れさる。国連開発計画とオックスフォード大学が77カ国・7万3000人超に行った調査では、政府にもっと強い気候対策を求める人が世界で80%、対立を脇に置いた国際協調を求める人は86%に達した。関心を持っている方が多数派なのだ。ただ互いに、自分が多数派だと知らない。ソルニットは、この乖離を生む構えを「ナイーブ・シニシズム(素朴な悲観)」と呼ぶ。詳しく調べないまま事態を最悪と決めつけ、その断定を世慣れた態度と取り違えることである。彼女はもう一つ、災害社会学の「エリート・パニック」を挙げる。統制しなければ人々は暴走するという為政者側の恐れを指す語だが、実際の災害の現場で救助と支援を最初に組織するのは、多くの場合その場の住民だと研究は記録してきた。何が起きるかより、人が何をすると想定されているかが、制度の設計を決めている。

郵便局が「見守り」を配達する
As France’s Elders Swelter in the Heat, Postal Workers Come to the Rescue | The New York Times (Aug 3)
フランス公衆衛生庁の暫定推計で、6月の熱波による死者は約6000人、3分の2が75歳以上だった。自宅死が特に増え、政府は同月、郵便配達員に高齢者の安否確認を求める緊急方針を出した。市の見守り名簿は更新が難しく、登録しない人を把握できない。全国6万5000人の配達員が地域の隅々に入り込んでいることが根拠となった。ある配達員は、冷房のない部屋の窓にアルミ箔を貼る住民に、マラソン用の保温シートを勧めた。室温は4度下がった。行政が届かない範囲を、配達網の毛細血管が代替し始めている。

高齢者住宅が「世代」を混ぜ始める
It takes a village: Three new co-living developments | Monocle (Jul)
高齢者住宅は、同年代だけを集めて管理する施設として設計されてきた。その前提を外す事例が生まれている。モントリオールの Coop MIL は91戸の住宅協同組合で、入居には委員会への参加が要る。78歳の入居者は「高齢者だけの環境は刺激がない。中庭で子どもが叫んでいる、それが生きているということだ」と語る。シドニーの The Cambridge は「垂直型リタイアメント・ビレッジ」を掲げる29階建てで、教会と小学校と介護施設を同じ区画に収めた。マレーシアの Millennia Village は施設への忌避が根強い土地柄を踏まえ、リゾートを名乗り、短期滞在で若い訪問者を取り込み、夜は麻雀とカラオケで人を集める。安全のために年齢で分けた設計が、分けないことを利点として売り始めている。

「姥姥経済」とデジタル祖母
The "Grandma Economy": Young Chinese Turn Nostalgia into a Cultural Force | Baiguan (Aug 6)
中国の急速な都市化は、数億の若者を村から都市へ移した。距離に加えて話題も食い違い、若者は職場やネット上の話をし、祖父母は食事と睡眠の心配を繰り返す。その空白に入り込んだのが「姥姥経済」、母方の祖母を意味する「姥姥(ラオラオ)」の動画を若者が観る市場である。若い利用者は高齢の発信者を「電子親人」「賽博祖輩」、電子的な親族、「サイバー祖先」と呼ぶ。2025年6月時点で、Douyin には登録者100万人超の高齢発信者が少なくとも77人おり、福建省の90歳は数か月で113万人に達し、その46%が25〜34歳だった。コメント欄には「おばあちゃん、大学院に受かったよ」という報告が並ぶ。血縁の義務を除いた祖父母との関係が、商品として流通し始めている。

「顔を貸す」という副業
In China, people are renting out their faces to AI | Rest of World (Jul 28)
中国では今年第1四半期に約12万8000本の縦型短編ドラマが公開され、95%超が制作に AI を使った。俳優を雇うより安いためである。そこで、自分の容姿を使用許諾する市場が生まれた。複数のプラットフォームが15ドルから700ドルを支払い、制作側は性別や年齢、雰囲気の分類で顔を検索し、ジャンルで絞り込む。ByteDance は今年、顔や声の無断再現を含む動画を8万5000本以上削除し、広州の裁判所は3年で約700件の顔の窃用を扱った。北京の弁護士は、市場は商慣行を明確にするが、一度使われた顔のコントロールは取り戻せないと警告する。盗まれるくらいなら貸す、という選択が制度化されつつある。

「参謀長」が企業に増える
In Hot Demand: Chief of Staff? | Korn Ferry (Jul 22)
「参謀長(Chief of Staff)」は元来、政治と軍事の役職だった。それが企業の役員を支える職として増えている。Chief of Staff Network の調査によれば、純増ベースで2019年から3割増え、伸びの多くは中小企業による。奇妙なのは時期である。この職の業務の多くは日程と連絡の管理で、AI が最も速く自動化している領域にあたる。人材会社 Korn Ferry のデビッド・ファリスは、増加はむしろ AI を前面に出す企業で、経営者の構想を実現する切迫感の表れだと見る。「上級の戦略的な何でも屋だ」。定型業務が機械に移った先で、部門の境界をまたいで人を動かす役割が、独立した職名を得ている。

「燃え尽きない起業家」の家
Inside the London hacker house taking a stand against founder burnout | TechCrunch (Aug 1)
ハッカーハウスは72時間の連続作業に象徴される短期集中の文化と結びついてきた。ロンドンの6人が3月に始めた Lift House は、その反転を掲げる。入居の条件は事業以外の趣味を持つことと、運動への関心である。日曜に日誌で自然の中の時間や食事を記録し、火曜は地域のバレーボールに出る。ロンドンの技術環境を使い切る「ロンドンマキシング(Londonmaxxing)」と呼ばれる潮流の一部でもある。同市のスタートアップは今年147億ドルを調達し、120億ドルが AI 企業だが、出口は米国に向かい、ある投資家は米国移住を出資の条件にした。働き方は設計で変えられても、どこで働くかは資本が決めている。

社交の場が「健康」を求める
The London members’ clubs joining the wellness revolution | Financial Times (Jul 27)
米国で酒を飲む人は54%と、1939年の調査開始以来最低になった。そして WHO は孤独を公衆衛生上の課題に挙げる。この二つを背景に、ロンドンの会員制クラブが健康施設を組み込み始めた。ナイトクラブ Tramp は今年、赤色光の個室やピラティス、瞑想室を備えた Tramp Health をメイフェアに開いた。Six Senses の会員費は3000〜3万7000ポンド。不動産会社の2024年の報告では、この4年に開業したクラブの数が1985年以降の30年間を上回った。酒場が担ってきた社交の機能が、健康の設備とともに会費の内側へ移りつつある。

集まるのに「口実」がいる
Gen Z Is Testing the Limits of How Weird Parties Can Get | The Atlantic (Aug 5)
友人と会うのは、連絡が容易になったぶん、対面である理由を要するようになった。米国の若年層で、極端に限定的なテーマを掲げる集まりが増えている。「歴史上の悪い判断について8分の発表をする」「好きな地下鉄の駅の格好で来る」。ある25歳は、招かれる集まりの10件中8件にテーマがあると語る。招待アプリ Partiful では、限定的で凝った催しへの参加表明が2024年から2025年に4倍超に伸びた。アルコール離れが進むなか、変わったテーマが社交の潤滑油の代わりを果たす。ただし費用もかさみ、ある参加者は一度の主催に平均200ドルを使い、開催を減らした。会うこと自体が目的にならなくなり、会うための企画が要る。

「麻雀」が10代に降りてきた
Mahjong Swept Summer Camp This Year. Is Canasta Next? | The Wall Street Journal (Aug 3)
麻雀は19世紀中国に生まれ、1920年代の米国で女性のあいだに広まった。以来、祖母や母の世代の遊びであり、子どもは同席を許されないものだった。その卓が今夏、10代の集まる場所に現れた。米国北東部のサマーキャンプが相次いで講師を雇い、複数日の講習を開いている。選択活動に加えたキャンプでは、参加者と職員が時間を問わず卓を囲む。親には牌の郵送を頼む要請が届く。14歳の参加者は母から教わった。その母は1年前まで関心がなく、祖母の卓には入れてもらえなかった。いま3世代で打つ。話しながら頭を使い、世代を越えて残ってきたものを子どもが求めている、と責任者は見る。画面から離れる口実として、最も古い遊びが選ばれている。

AI新興企業は従業員が「25%少ない」
The Rise of Million-Dollar Companies With Just One Employee | The Wall Street Journal (Jul 29)
ハーバード・ビジネス・スクールの研究者らが新興企業5万社を調べたところ、AI を主軸とする企業は従業員数が25%少なかった。決済会社 Stripe で年100万ドル超を稼ぐ一人事業者は2023年から2025年に倍増した。事業規模と雇用規模が切り離され始めている。

Lost Weekend:フィービー・ブリジャーズとプラネタリウム
ALUM:デレク・ジーターが手掛ける大学街の会員制クラブ兼住宅
Christopher Nolan vs Zhong Shu:ノーランと鍾舒の話題の対話
構造の世界:あらゆるものが構造物である
共異体の人類学:共同体に代わる原理としての共異体

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【更新】[WORKSIGHT] 賭博と戦争:遠い戦火・遠のく記憶と関わる術
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昨年、猛暑日と熱帯夜がともに60日に達したような地域に住んでいると、気候変動を身近なものとして考える機会が多くなります。それでも、自分の危機感がどこまで共有されているのかは、正直なところ分かってはいませんでした。FOCUS の記事によれば、世界の8割の人が政府にもっと強い気候対策を求めています。それなのに、ほとんどの人は自分が多数派だと知らない。そしてこの構図は気候に限らないのだと思います。会いたいのに口実がないと誘えない若者たち、施設に入りたくないと言えない高齢者、燃え尽きたと言い出せない創業者もいる。今号に並んだのは、意外なほど「本当はみんなそう思っている」ことの話でした。毎週さまざまなニュースに触れていますが、記事が教えてくれるのは新しい事実というより、じつは自分だけではなかったという確認なのではないでしょうか。

Read the original on methreee.substack.com

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