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Lobsterr Letter · Jun 21, 2026

vol.369 : Rest and Idleness

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Lobsterr Letter · Lobsterr Letter

『Lobsterr Letter』は、毎週届くニュースレターです。世界中から、未来の兆しになるようなビジネスやカルチャーについてのニュースを集め、感想や考えを添えてお届けします。

Rinnai Aoyama 1周年記念イベントの一つとして、LobsterrのBook Clubを開催します。

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日時:7月11日(土)11:00–12:30:Book Club 第1部 (定員10名)、14:00–15:30:Book Club 第2部 (定員10名)、17:30–18:30:公開Podcast収録 (定員30名)
場所:会場:Rinnai Aoyama 東京都港区南青山4-18-11 フォレストヒルズイースト1F/4F
書籍:ヘンリー・ペトロスキー 著作「フォークの歯はなぜ四本になったか」
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応募の締切りは6/30です(枠に限りがあり、抽選制となります)。お会いできることを楽しみにしています。詳細はこちらをご確認ください。


トップクラブは多言語の職場
vol.365でも紹介したカーボベルデ代表のロベルト・ロペスのエピソードから始まるこの『Financial Times』の記事は、現代のW杯における言語の問題を掘り下げている。ダブリン出身の彼がLinkedInに届いたポルトガル語のメッセージを翻訳してみると、父親の出身国カーボベルデの代表監督からのオファーだったそうだ。そして、現在彼はカーボベルデ代表選手としてW杯に出場している。
1995年のEU市民のプロスポーツ参加自由化以降、クラブチームは複数言語が行き交う職場になった。かつては、チェルシーの練習場にはイタリア語グループとフランス語グループが別々に存在し、キャプテンのフランク・ランパードは「チームスピリットの構築に最悪だった」と振り返る。カルロ・アンチェロッティはPSG監督時代を振り返り「イタリア人にはイタリア語で、ブラジル人には擬似イタリア語で、ベッカムにはジェスチャーで伝えた」と語っている。
やがて選手たちは共通言語の重要性に気づいた。エムバペはPSGでスペイン語を習得し、「国際的な選手と一緒にプレーするには複数言語が重要だ」と語る。ルカクはイタリア語でボールの要求の仕方を覚え、「言語によってニュアンスが違うから、正確な言葉を知らなければならない」と言う。かつて語学が苦手で知られたイングランド出身の選手も変わりつつあり、ハリー・ケインはバイエルンでドイツ語を、アンソニー・ゴードンはバルセロナ加入会見ではスペイン語を披露した。AIによって言語習得が必要なくなると言われている時代においても、言語の壁を越える能力は、グローバルなフットボールを生き抜くための必須スキルになっている。
The World Cup’s Unlikely Linguists The Financial Times汗をかきながら出会う新しいマッチングアプリ
スポーツやフィットネスを通じて出会いを提供する新しいマッチングアプリが広がっていることについて『The New York Times』が伝えている。この記事で紹介されている、ニコール・ホーとD.C.バンクスは初対面のまま、フィットネスレース「Hyrox」のミックスダブルスチームを組み、1時間13分間並んで走り、交代で筋トレをこなし、汗だくになった最後に番号を交換したそうだ。二人が出会ったのは、Hyroxの公式パートナーアプリSurfだ。その他にも、同じジムにいる人同士をつなぐLeg Day、「ウェルネスの公式デートアプリ」を名乗るAteamなど、新興アプリが相次いで登場している。共通するのは、運動好き同士は価値観も近いという前提と、できるだけ早くリアルな出会いに導く設計だ。
心理学者ゲイリー・レワンドウスキーは、SNS上の自分は作り込まれているからこそ「人は本物らしさに飢えている」と指摘する。ランニングやピックルボールを一緒にすることで、何週間ものメッセージのやり取りより早く相性がわかるという。
ジムでの出会いという発想自体は新しくない。1983年のRolling Stoneはジムを「新しい独身者のバー」と呼んだが、その後数十年でその空気は薄れた。2006年には本紙が「ジムをナンパスポットと見る発想は、ネオンピンクのレッグウォーマー同様に時代遅れだ」と書いたほどだ。だがいま、Z世代がアルコールやバーよりフィットネスに時間とお金を使うようになったことで、振り子が再び戻りつつあるのかもしれない。
ただしポスト#MeToo時代、知らない人に声をかけること自体への抵抗が双方に強い。だからこそ、そこに参加の意思を可視化する仕組みが設計されている。Surfのイベントではピンクのブレスレットが「話しかけてOK」の合図になり、Leg Dayは位置情報を使い、声のかけ方(対面・電話・Instagram)まで指定できる。ジムを神聖な一人時間と考える人や、運動中のハラスメント経験を持つ人にとって、明示的にオプトインできることが安心につながっている。
Sick of Swiping, Some Daters Would Rather Sweat Together The New York Times最も健康な世代が、最も孤独である理由
ジャーナリスト・デレク・トンプソンによる、アメリカで加速する「自己最適化」カルチャーの光と影について語るロングリードを紹介したい。
Ouraリングを装着して暮らしている彼は、ある日、深夜の酒をやめ、昼食の会食を断ってジムを優先するうちに、健康スコアは上がったが、人と過ごす時間は確実に減っていることに気づく。この個人的な経験を入り口に、トンプソンは「エンハンスド・セルフ(強化された自己)」と呼ばれるメガトレンドについて語る。GLP-1の爆発的普及、ペプチド注射やサプリによるバイオハッキング、2024年には過去最高の7,700万人がジムに通い、ランニングクラブ参加者数は1年で4倍近くに増加した。一方でアルコール消費量は統計開始以来の最低水準を記録し、35歳未満の若者の3分の2が「少量の飲酒も有害」と答えているという。
トンプソンはこのトレンドを3つの視点で整理する。第一に、最適化が新しい美徳になったこと。病気を治すために開発された薬や機器が、健康な人をさらに強化するために活用されている。第二にフィットネスが新しい「階級シグナル」になったこと。かつて年収で他者と比較していた人々が、VO2maxの数値やDeepスリープの割合で互いをランク付けするようになった。最後に、健康が第二の「仕事」になったこと。ウェアラブルデバイスの膨大なデータを管理するために、人々は自分の身体のCEOとして振る舞いはじめる。しかし、皮肉にも、史上最もよく運動し、最もよく眠り、最も節制しているZ世代が、同時に史上最も孤独で、最も友人が少なく、最も不安を抱えた世代だ。ノースウェスタン大学の研究によれば、80歳を超えて数十歳若い人と同等の認知機能を持つ「スーパーエイジャー」の共通点は、ほぼ唯一「豊かな友人関係と社会的つながり」だった。イギリスの50万人規模の研究は、パートナーと同居し家族を頻繁に訪れることが、運動と同程度に長寿と相関すると示した。記事の最後で、トンプソンが、久々に会った友人と深酒した翌朝、Ouraリングに記録されなかった前夜のデータを「よかった」と思う場面が印象的だった。
人間関係の充実さが幸福度と相関するという視点はもはや何の新しさもないが、そうではない方向(健康を人間関係に優先させる)に、多層的なドライバーが向かわせている。この矛盾はしばらく解消されない状態が続きそうだ。
The Cult of the Enhanced Self Derek Thompsonウェルネス産業が「怠惰」を販売できない理由
ライターのレオ・ウミリオが自身のニュースレター『The Gazette』に寄稿した「休息」と「怠惰」の違いについての解説が面白い。
社会が「承認」する、リカバリー、セルフケア、ダウンタイムなどの現代の休息は本質的に「仕事に奉仕する休息」であり、ウミリオはこれを「アリバイを持った怠惰」と呼ぶ。より良いパフォーマンスのためにマットレスを買い、アプリで睡眠を最適化し、リトリートに通う。いずれも「疲弊したマシンを整備するための投資」であり、ウェルネス産業が休息を販売できるのはそれがリターンを約束するからだ。一方、怠惰とはアリバイを持たない時間だ。生産性向上を約束しない。
雨を眺める男を収益化することはできない。できるのは「その雨があなたのコルチゾールを下げ業績を上げる」と謳うメディテーションアプリを彼に売ることだけで、そのことを自覚した瞬間に、彼は怠惰であることをやめる。雨は道具になり、怠惰は仕事に変換される。「これは自分のためになっている」と気づいた瞬間、その時間は怠惰でなくなり、休息になり、経済に組み込まれる。
ウミリオは、どんな目的にも奉仕せず、ただ光の変化を眺めて過ごす時間だけが人生において「外部」を持ち、本当に自分のものだと著者は結ぶ。ウェルネスの語彙が日本にも浸透したいま、「自分のための時間」を謳う商品が全て「より良い自分になるため」に設計されているという矛盾は、思いのほか見逃されているのでろうと思わされた。
On the Difference Between Rest and Idleness Gazette中国製AIという現実解
この『Rest of World』の記事は、アメリカの開発者やスタートアップが中国製AIモデルへ移行している現状について書いている。サンディエゴ在住のエンジニアのスチュ・クロットは、これまでClaudeでコーディングしていたが、最近より安価な選択肢であるDeepSeekに切り替えた。Claudeなら1時間のコーディングで約10ドルかかるところ、DeepSeekなら50セント以下で済む。「コストを見るたびに笑ってしまう。出力品質の違いは正直わからない」とクロットは語る。
サンフランシスコのAIアシスタント企業Lindyも、ClaudeからDeepSeekへ完全移行し、創業者フロ・クリヴェッロは「メールを書くのに神様はいらない」と語った。OpenRouter上では、DeepSeek・Tencent・Minimax・Xiaomiが利用率トップ4を占める。
中国企業が価格を抑えられる背景には、自国の人件費とインフラコストの低さがある。一方で、政治的な逆風も強い。AirbnbとコーディングツールのCursorを運営するAnysphereは、中国製オープンモデルを使っていたことを開示した後、米議会の調査対象になった。データセキュリティへの懸念から、大企業や規制産業ほど中国製モデルの採用には慎重だという。
それでも現場の開発者たちの判断は実利的だ。ダラス在住の開発者は、米中双方のモデルを使い分けながら、「もし中国製モデルが高性能でかつ安いなら、そちらに行く」と語る。中国製AIがグローバルなインフラ層の一部になりつつある一方、その利用をいかに収益や企業との長期的な信頼関係に変換できるかが、次の課題になっていくのだろう。
When Americans Choose Chinese AI Rest of WorldAIスロップ時代の人間のレシピ
この『ニューヨーク・タイムズ』の記事は、アメリカ最大のデジタル・印刷出版社であるPeople Inc.による、AIに対するユニークな対抗策を紹介している。
同社は『Food & Wine』『Allrecipes』『Southern Living』などを傘下に持ち、食関連コンテンツの制作量で他の出版社を圧倒する。しかし、AIサマリーの台頭によって検索流入が過去4年で75%から25%へと激減した。そのなかでCEOニール・ヴォーゲは「AIには不可能なこと」へ注力することを決断する。
いま、Peopleは、アラバマ州バーミンガム郊外に構える40,000平方フィートのテストキッチンでは、年間1,800本の新レシピを開発し、さらに5,300本をテストしている。28のキッチン、13の撮影スタジオ、3つのビデオスタジオを擁し、月175本の動画を制作する。ヴォーゲルが指摘するように、AIは複数のレシピを「合成」することはできても、実際に焼いて嗅いで味見をして「これは使えない」と判断するプロセスを持たない。
『Southern Living』は、1966年の創刊以来蓄積した2万本以上の未公開レシピをデジタル化する新プロジェクトも進めている。ヴォーゲルはOpenAIとのライセンス契約を持ちつつ、AI活用を食材価格の調査やSNSモニタリングなど業務効率化に限定し、記事・編集・ビジュアル・クリエイティブへの活用は禁止しているという。
この記事は、AIスロップが増殖すればするほど、「誰かが本当に試作し、失敗し、改良した」という事実が最大の差別化要因になるということを説いている。
しかし、手紙や紙の写真アルバムが消えつつあのと同じで、人間らしさやリアリティへのニーズ、AIが作ったものへの忌避感は意外とすぐに弱まる可能性もあるのではと思う。そうなった時にPeopleはどのような手を打つのだろうか。
The Giant Test Kitchen Where Cooks Battle A.I. Slop The New York Times続編と呼ばない続編映画たち
この『Future Party』の記事は、ハリウッドが「続編」「リブート」「リメイク」という言葉を避けて続編の作品を売り出そうとしている動きを取り上げている。
ソニーピクチャーズは『ソーシャル・ネットワーク』の続編を「コンパニオン・ピース」と呼び、ユニバーサルは2024年の『ツイスターズ』を「新章」と呼んだ。ディズニーは実写化作品を「リイマジニング」と呼び、Amazon MGMは『スペースボールズ』続編に『Spaceballs: The New One』というタイトルをつけている。パラマウントに至っては、2022年版『スクリーム』を単に『Scream』、今年の『最終絶叫計画6』を『Scary Movie』とナンバリングなしで呼びながら、これらの作品を「リブート」と続編という意味である「シークエル」を組み合わせた造語である「リブートクエル」と説明している。
映画マーケティングの専門家のマーク・ウェインストックは「観客は『続編』という言葉を宿題のように感じるよう訓練されてしまった」と語る。数字の「2」や「3」がタイトルに入っただけでうんざりされるという。2024年のNRG調査では、Z世代の75%がリメイクやフランチャイズ作品よりオリジナルコンテンツを好むという結果も出ている。
タイトルの言い換えはまだ表面的な対応にすぎない。今後は続編の作り方そのものを大胆に再構築する作品が増えていくのかもしれない。
Hollywood Finds New Ways To Say Sequel Future Party

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