本稿で使う「母AEI」は、一般的なAEIの計算思想を繁殖牝馬1頭の産駒成績へ応用したF4競馬独自の分析指標である。
JBISやJRAが定めた公式指標・業界標準用語ではない。「2代母系AEI」も同様に、F4競馬が牝系を広く検証するために定義した独自指標だ。
その母AEIで計算すると、フサイチパンドラは14.8327、シーザリオは10.2665となる。
数字だけを比べれば、フサイチパンドラの方が優秀に見える。
ところが、それぞれの最大賞金馬を一頭だけ除くと、フサイチパンドラは0.9495、シーザリオは6.5489となる。
1.00が出生年補正後の平均だ。歴史的名馬を一頭抜いた瞬間、両者の評価は逆転する。
名牝系の再現性を見るなら、最高到達点だけでは足りない。大物を一頭除いた後に、何頭、どの範囲へ成果が残るかを見る必要がある。
役割を一言で分けると、産駒の成果を見るのがAEI、その種牡馬に集まった繁殖牝馬群の背景を見るのがCPIだ。
JBISのAEIは、産駒一頭当たりの平均収得賞金を、全出走馬一頭当たりの平均収得賞金で割る。
AEI=(産駒の収得賞金÷産駒出走頭数)÷全出走馬平均
1.00が全出走馬の平均で、1.00を上回れば対象産駒の平均収得賞金が全体平均より高い。
CPIでは、対象種牡馬の各産駒と同じ母から生まれた兄弟馬を集計する。つまり、特定の繁殖牝馬一頭ではなく、その種牡馬に配合された繁殖牝馬群の背景を測る、種牡馬側の集団指標である。
CPI=(兄弟馬の総収得賞金÷兄弟馬出走頭数)÷全出走馬平均
こちらも1.00が平均だ。
ただし、CPIは特定の繁殖牝馬一頭を補正する道具ではない。母AEIをCPIで割っても、その母の純粋な遺伝力は算出できない。
一方、「母AEI」と「2代母系AEI」はF4競馬独自の名称・分析方法であり、公式AEIの掲載値ではない。
母AEIは、母の全出走産駒が獲得した平地総賞金を、各産駒の出生年別期待賞金の合計で割る。2代母系AEIは、2代母の娘を経由して生まれた全出走産駒を対象に、同じ方法で計算する。
数式の考え方は既存のAEIを参考にしているが、集計単位と分析用途を牝系向けに拡張したF4競馬の検証指標である。
ここが最も重要だ。
母AEIは、配合相手となった種牡馬の能力を補正していない。優秀な種牡馬との産駒が多い母と、異なる水準の種牡馬を配合された母を、完全に同じ条件で比べているわけではない。
したがって、母AEIが高くても「母の遺伝力だけが高い」とは断定できない。母AEIが示すのは、その母と実際に選ばれた配合相手から生まれた産駒群の成果である。
見るべきものは、母単独の能力ではなく「母+実際の配合」が残した結果だ。出走頭数だけでなく、どの種牡馬との産駒が、どれだけ賞金を稼いだかまで確認する必要がある。
フサイチパンドラの出走産駒は8頭で、母AEIは14.8327に達する。
ところが、最大賞金馬のアーモンドアイを除くと0.9495。残った産駒群の成績は、出生年補正後の平均付近となる。
これはフサイチパンドラやアーモンドアイの価値を下げる話ではない。歴史的名馬を送り出した事実は、それ自体が極めて大きな成果だ。
ただし、「一頭の最高到達点」と「産駒群の再現性」は別の評価軸である。フサイチパンドラの高い母AEIは、複数産駒の均質な強さより、アーモンドアイ一頭の偉大さを強く映している。
現時点では「一頭依存」と仮分類できる。
シーザリオは出走産駒12頭で、母AEI10.2665。
さらに2代母キロフプリミエールまで広げると、国内平地の出走馬はシーザリオ、シルクプレアデス、サバンナズチョイスの計3つの娘枝、23頭。2代母系AEIは5.8651となる。
最大賞金馬のエピファネイアを除いても、シーザリオの母AEIは6.5489。2代母系AEIも3.6301を維持する。
ここから確認できるのは、3枝23頭を合算した2代母系集計でも、最大賞金馬を一頭除いた後に高い値が残ることだ。
ただし、3つの娘枝がそれぞれ高い成果を出しているとは限らない。枝別の賞金分布を確認しない限り、各枝に再現性があるとは断定できない。
したがって、現段階のシーザリオは「複数枝の再現型」ではなく、「2代母系合算・除外後高値維持」と分類するのが正確だ。
繁殖牝馬としてのアーモンドアイは、出走産駒2頭で母AEI3.4554。平均を大きく上回るが、2頭だけの数字は一頭の成績で大きく動く。
2代母系まで広げると出走24頭、AEI1.2945。最大賞金馬を除いた後は1.0110となる。
平均付近を維持しているものの、1.00をわずかに上回ったことを合格証にはできない。アーモンドアイ自身については、出走産駒が増えるまで「小標本」として保留するのが妥当だ。
AEIは高低だけでなく、何頭、どの配合、どの娘枝から作られた数字なのかをセットで読む必要がある。
最初に、母の全出走産駒数を見る。2頭で作られた数字と、12頭で維持された数字では安定度が違う。
次に配合種牡馬を並べ、賞金が特定の父との産駒へ集中していないかを確認する。父の知名度ではなく、実際の産駒成績の分布を見る。
3つ目に、2代母の娘別出走産駒を確認する。何本の娘枝があり、各枝から何頭が出走しているかを数える。
4つ目に、最大賞金馬を一頭だけ除いて考える。大物を抜いた後にも成果が残るかを見る耐久試験だ。
最後に、「一頭依存」「小標本」「2代母系合算・除外後高値維持」のいずれかへ仮分類する。「複数枝再現」と呼べるのは、枝別の賞金分布まで確認し、複数の枝に成果が残っている場合だけだ。
この分類は優劣を決める判決ではない。現時点で得られる証拠の量と、数字の偏り方を整理するためのものだ。
血統は未来を決める予言ではなく、まだ走っていない馬の能力を考えるための事前確率である。
次に新馬の血統表を見るときは、父と母父、有名近親で止まらず、母の全出走産駒、配合種牡馬、2代母の娘別産駒まで確認してほしい。名馬の名前を探す血統予想から、成果の残り方を読む血統予想へ進める。

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