AIは非常に便利です。使えば使うほど、仕事の仕方が変わっていく手応えがあります。以前なら数日かかっていた作業が、数分で完了することも珍しくなくなってきました。
ただ、不思議なことに、これだけ効率化が進んでいるはずなのに、さほど余裕が生まれた感じも、その分だけ業績がよくなった感じもありません。便利になっている一方で、それに見合う価値を本当に生み出せているのかという疑問が残ります。
AIがもたらす技術革新によって、この先もさまざまなことが変わっていくのは避けられないと思います。その一方で、その革新が本当に幸福につながるのかという問いには、効率や成長とは分けて向き合う必要があります。
先日のニュースレターでは、加速と減速という二つのモードを行き来しながら過ごすことの大切さについて触れました。
社会やビジネス、日々の生活では、「立ち止まる」「ペースを落とす」「余白をつくる」といったことが、これまで以上に求められています。技術革新による加速が強まるほど、必要に応じて減速する力も重要になります。
この加速と減速を、どう使い分けるのか。どう織り交ぜながら、自分たちが望む方向へ進んでいくのか。これは、これからを考えるうえで非常に重要な問いだと感じています。
inquire
モリジュンヤ
AIによって、これまで人が担ってきた仕事の多くを、より速く、簡単にできるようになりつつあります。文章を書くことも、情報を集めることも、一人で仕事を進めることもできる。では、そんな時代に、人間だからこそ育てていけるものは何なのでしょうか。
今回は、AIによって仕事や組織が変わっていくなかで、これから人間が育てていきたいものについて考えた、inquire代表・モリジュンヤの3つのnoteを紹介します。
AIを使えば、人間の仕事は減り、もっと重要なことに時間を使えるようになる。そんな期待がある一方で、実際に仕事へ組み込んでみると、AIに前提を説明し、出力を確認し、間違いを修正するという新しい作業が生まれています。
こうした仕事を「ボットシッティング」と呼ぶ考え方があります。AIを仕事で使える状態にするために、人間が文脈を与え、出力を確認し、必要に応じて修正する。ある調査では、AIを仕事で使う人たちは、週平均6.4時間をこうした作業に費やしているといいます。
もちろん、すべての作業が無駄なわけではありません。重要な情報が正しいかを確かめたり、専門的な判断を加えたり、最終的な品質に責任を持ったりすることは、むしろAIが広がるほど重要になります。
AIによって何時間削減できたかだけでは、本当に仕事が楽になったのかはわからない。AIの力を引き出すために、誰がどんな仕事を担っているのか。AI時代の働き方を考えるうえでは、そんな「見えない人間の仕事」にも目を向ける必要がありそうです。
「ボットシッティング」:AIを仕事で使える状態にするために人間が担う作業|モリジュンヤ
生成AIを使うようになって、一人でできる仕事の範囲は広がっています。調査や企画、文章作成など、これまで誰かと分担していた仕事も、一人で進められる場面が増えてきました。
LeadDevに掲載されたJames Socol氏の記事「Staff+ engineers must rebuild team culture」は、この変化をエンジニアリングチームの文化という観点から捉えています。AIによって個人で完結できる仕事が増える一方で、気になるのはチームのカルチャーです。
カルチャーは、理念や行動指針を決めるだけで生まれるものではありません。一緒に仕事をしながら、誰かの判断を見たり、困ったときに助けてもらったり、失敗について話したりする。そうした日々の相互作用の積み重ねによって育まれてきたものでもあります。
AIによってこうした時間が自然には生まれにくくなるからこそ、仕事を効率化するだけでなく、どんな経験を人と共有するのかを意識的に考える必要があります。AI時代にチームで働く意味について、改めて考えさせられます。
AIによって1人で可能な仕事が広がると、チームのカルチャーは自然には育ちにくい
AIについて考えていると、その変化の速さに焦りを感じることがあります。「早く試さなければ」「もっと使わなければ」と、組織全体が急かされるような感覚も生まれやすくなっています。
HingeでVP of Futuresを務めるJen Dunnamのインタビューでは、AI時代のリーダーに必要なのは、未来を正確に予測することではなく、組織のなかに落ち着きをつくることだという考え方が語られています。
変化を小さな問いに分解する。もっともらしい答えにも異論を差し挟む。そして、すぐに成果につながらなくても、考えるための時間を守る。AIによって仕事が効率化されても、その余白をさらに多くの仕事で埋めてしまえば、考える時間は増えません。
変化が速いからこそ、すべてを急ぐ必要はない。何を急ぎ、何には時間をかけるのかを考え、人が落ち着いて問いを持ち続けられる環境をつくることも、これからのリーダーの大切な役割なのだと思います。
AI時代のリーダーは、組織の焦りを増やさず、落ち着きをもたらす
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