4月から6月の間は、残業、つまり時間外の労働時間がなるべく少なくなるようにする。そういう要求をされることも、職場によってはあるんですね。
理由は、
ためです。
社会保険料を減らすために、春から初夏にかけて、残業を減らそうという試みをするのですね。
その目安なり、基準なりを知りたいところですよね。
取り組むほどの効果があるのかどうか。
やったところでせいぜい誤差程度のものでしかないのか。
さあ、どうなることやら。
例えば、普段の時間外労働時間が平均で月30時間だとして、調整して、4月から6月は月25時間の時間外労働にすると、社会保険料はどれくらい変わるでしょうか。
仮に、1時間あたりの給与が5,000円の人がいたとして、この人が法定時間外に残業すると、25%増しとして、1時間あたり6,250円の報酬になります。
この方が1ヶ月あたりにおよそ30時間の時間外労働をしているところ、それを月に25時間まで減らしたとすると、社会保険料はどれほど減るのか。
減った時間数は月5時間ですから、5時間掛ける6,250円で、1ヶ月あたり31,250円、報酬月額が少なくなります。
社会保険料は、標準報酬月額の等級によって決まりますので、
では、この方の場合、1ヶ月に31,250円の報酬月額が少なくなったとして、社会保険料の標準報酬月額の等級が下がるのかどうか。
この方の報酬月額が月850,000円だとして、そこから時間外労働、月5時間を減らしたので、31,250円の報酬月額を減らすと、
報酬月額は818,750円。
この場合、標準報酬月額の等級は、40等級の830,000円のまま。
そのため、時間外労働を1ヶ月に5時間減らしたとしても、社会保険料は変わらない。
では時間外労働を月に10時間減らしたとするとどうなるか。
この場合、報酬月額は月に62,500円減りますから、850,000円から62,500円を減らして、787,500円となります。
これが報酬月額。社会保険では賃金とか給与ではなく、報酬月額という表現を使うんですね。
その報酬月額に対応する標準報酬月額の等級は39級の790,000円。
ですので、月に10時間、時間外労働を減らせば、標準報酬月額の等級が1等級下がります。
その結果、社会保険料は減ります。
40等級の830,000円が標準報酬月額だと、社会保険料を30%とした場合、1月の社会保険料は249,000円。
一方で、39等級の790,000円の場合は、社会保険料は237,000円。
月に10時間、時間外労働を減らして、社会保険料は12,000円減ります。
1か月で12,000円です。
社会保険料は労使折半なので、
です。
月収850,000円の人が時間外労働を4月から6月に減らす試みをして、その結果、減らすことができた社会保険料は月6,000円。
あえて取り込むほどの価値があるのかどうか。
収入の規模から考えれば、おそらくやってもやらなくてもいいんじゃないか、という結論になるのでは。
社会保険料の「節約」だけを見てしまうと、実際には将来給付や休業補償を下げる側面があります。
特に4〜6月の報酬を意図的に抑えると、
健康保険料
厚生年金保険料
が下がる一方で、
傷病手当金
出産手当金
老齢厚生年金
障害厚生年金
遺族厚生年金
などの算定基礎にも影響します。
保険料と給付が連動していますから。
例えば、傷病手当金は、原則として「支給開始前12か月の標準報酬月額平均」を基礎にしますので、
標準報酬月額を下げると、病気や怪我で休んでいる時の給付も減ります。
老齢厚生年金も、長期的には平均標準報酬額ベースですから、将来年金にも影響します。
を前面に出すより、
「恒常的な長時間労働を減らす」
「年間を通じて労働時間を平準化する」
という目的で、年間を通して時間外労働を減らしていく方が正攻法です。
業務の平準化
ムダ作業削減
繁忙時期の見直し
IT化
人員配置改善
残業を前提とした業務の是正
などを通じて、年間を通じて少しずつ時間外労働を減らすなら、
健康配慮
生産性向上
人件費適正化
離職防止
採用力向上
につながります。
これならば、在職している人にも不自然さはありませんし、働き続けてくれる人も増えますから、
小銭を節約するのではなく、長い目で見て判断する方がリターンが大きい
でしょう。

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