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こーべ通信 · Aug 30, 2026

経営コンサルティング、という商売

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Nozomi Tanaka / 田中志 · こーべ通信

今日は、当社Cobe Associeの第8期最終日です。

2018年9月3日に創業したため、9月始まりの8月締めという少し珍しい会計期になっています。12月や3月の繁忙期から外れているので、税理士さんにはありがたいと言われます。みんな1-12月期とか4-3月期とかにするのは、少し思考停止なんじゃないか。税理士さんに迷惑をかけちゃダメよ。

うちの主業は経営コンサルティングです。何をしているのか、外からは(なんならやっている私本人にも)よくわからない商売です。

コンサル商売には、いくつか典型的なお金の稼ぎ方があります。「月額XX万円で色々教えます!」という顧問型や、「XXを便利にするシステム/パッケージを売ります!」というシステム販売型などです。前者の香りが濃いのが令和の虎界隈で、後者はショート動画で流れてくる「AI活用!」「システム導入!」系のアレです。どちらも大変怪しげなので、近づいてはいけません。特に後者はデジタル化やAI導入の補助金と結びついていたりするので、たちが悪い。補助金は市場をゆがめる悪です。前者については、まあ説明不要でしょう。

私の商売はどちらでもなく『人月型』です。Cobe Associeとして人月単価を決め、それに稼働量を掛けて見積もり、請求する。「うちの人月単価はA万円で、この1ヶ月の50%を使うので、A×1/2万円ください」。基本このフォーマットです。

新卒で入ったコンサル会社も人月型でした。新卒1年目のころ、上司がつくった見積書の人月単価欄を見て目が裏返った記憶があります。その後、自分で事業モデルをつくった2社目、3社目でも、ずっとこの形でやってきました。慣れているということもありますが、私はこの商売の形がけっこう好きです。お客さんに対して「私が働いて価値を出します」と言いやすいからです。

そして、「高すぎる」「おまえ、そんなに働いてないだろ」と言う権利がお客さん側に残り続けます。売り手だけが商品の価値を定義する商売は、ほら、不健全でしょう。買い手が文句を言える余地を残しておくことは、商売人全員が持つべき誠実さです。

ただし、人月型には致命的な弱点があります。拡張性のなさです。

たとえば人月単価200万円のコンサルタントが一人いたとして、12ヶ月すべてを仕事に使っても、売上は2,400万円です。もちろん大層な金額ですが、「来年は3,600万円稼ぎたい」と思ったら、出来ることは限られます。単価を上げるか、週末や睡眠時間まで売るしかありません。もっと商品を売る。もっと店舗を出す。もっとユーザーを増やす。そういう商売とは、努力の方向が根本的に違います。

しかも実際には、稼働率100%はほぼ不可能です。経費処理もしなくてはいけないし、採用もあるし、次の仕事の営業もしなくてはいけない。夜や土日を潰すのもいいけれど、パートナーや家族を不幸にしてまで稼ぐべき金などありません。そのため人月型商売では、ざっくり「人月単価×12ヶ月×70%」くらいが、無理なく続けられる売上水準だと言われます。

では、人月型のコンサル会社を大きくしたければどうするか。人を増やすことになります。単価を倍々に上げるのは難しいので、とにかく人数を増やす。10人で足りなければ100人、100人で足りなければ1,000人です。いま調べたら、アクセンチュアの日本スタッフは約3万人、ベイカレンドは7,500名、ノースサンドは2,100名、古巣BCGジャパンにも1,200名ほどでした。みんなでっけぇよ。

人を増やすことの問題は、社会人皆さま想像の通り、人材の質が落ちることです。これは商社やメーカーに比べ、コンサル会社にとって致命的です。人材のみが価値の生産設備であるのがコンサル会社なので。

経営コンサルティングという商売には、工場もなければ在庫もありません。ほとんど唯一の資源が人です。「業界知見を蓄積して」「過去プロジェクトのナレッジを活用して」「AIによって生産性を高めて」と各社いろいろ言いますが、最後はそれを誰かが頭に入れ、顧客の事情を理解し、考えて、話して、議論素材/納品物として提供する。少なくとも今のところ、ここから逃れるのは難しい。

だからコンサルティングを「大きな事業」にしようとすると、どうしても一つの圧力が働きます。顧客が許してくれるギリギリまで品質を下げ、できるだけ多く売る。構造的にこうなります。しょうがない。私の知る限り、規模を追いながらこの問題から完全に逃れたコンサル会社を知りません。

さて、Cobe Associeの今期決算です。売上速報値が「当社人月単価×12ヶ月×185%」でした。ちなみに前期は290%です。たくさん働きました。顧客からのクレームはゼロ。日々ご一緒している顧客側のメンバーからも、過分なくらい高く評価していただきました。春に3ヶ月ほどご一緒した製薬会社からは、「最初の1ヶ月だけでプロジェクト予算の元が取れました」と言っていただきました。コンサル冥利に尽きますね。

来期はおそらく売上も利益も減ります。185%という数字をさらに上げようとも(もちろん前期の290%に戻そうとも)思わないし、何より不可能です。会社をただの”事業箱”として考えるなら、これはよくない態度です。売上は伸ばすものだし、再現性をつくり、人を増やし、規模を拡大していくべきでしょう。

しかしコンサルティングを一つの『商売』として考えるなら、これもひとつの在り方。
自分の時間と心身をフルに使って、相手が支払ったもの以上の価値を出すだけ。
そしてできるだけ長く、それを続けること。
大きくすることと同じくらい、ただこれ拘ることも難しいです。

お便りをお待ちしています。

  • 鮫皮おろし 長次郎作:これでわさびをおろしたら甘いのなんの。日本酒のお供に最高です。大儲けしたら6万円する鬼泪model 黒檀を買います。 link

  • テスラ・ロボタクシー:一時話題になった「ハンドルがない2人乗りの車」が今週3日オースティンでお披露目される。自動運転システムは現在モデルYに搭載されているものと一緒。最近また事故を起こしていたけど大丈夫かしら。走っているところが見たい。 link

  • 兵庫俱楽部:将棋の例会があれば入会したかった。メンバーが神戸の政財界人で溢れている。人脈こそないけれど、元気のある若者集めて、自社オフィスで似たような会員制クラブをやろうかしら。JimdoでつくられたWebページを久しぶりにみたよ。 link

  • 酒をやめた世代が処方薬で不安を埋めるう:英国の若者がアルコールの代わりに、ハイになれる処方薬をばんばか使うようになった、という話をBBCが追っている。代表的に乱用されているのはプレガバリン商品名:リリカなど)で、社会不安への対処として広がり、過剰摂取による死亡例も出ている。日本・トーヨコで起きていることと同じだ。若者の飲酒離れは健康的な傾向として語られてきたが、抜けた分の穴は勝手には埋まらない。結局、不条理と向き合うために、人間には酒的な何かが必須なのだと思う。 link

  • AIで隠された家系図を辿る:自身の養子縁組の調査にAI・LLMを使った記録。断片的な記録と地名から血縁関係が一本の線につながっていく過程が生々しい。技術としては単なるデータ照合なのに、探索対象が自身に関わる人々の人生である以上、どこで手を止めるべきかという問いと向き合うことが難しい。書き手が自らの出自を素材にできてしまう強さと、我々全員が彼と同じことをできる不気味さが静かにそこにある。田中家の家系図ってみたことないけど、祖父母の家に行けばあるものなんだろうか… link

  • ルール破りを愛する怪しげな農場:伊クイントサポーレ農場の取材記事。干ばつを生き延びた在来種の種を選抜し、耕さず、農薬を使わず、化学肥料の代わりに微生物を入れる。アグロフォレストリーと太陽光スピーカーによる害虫忌避まではまだ分かるとして、量子物理学に基づく電磁周波数処理で植物の栄養吸収を促すという段になると、正直怪しげな匂いがしてくる。収益は毎年倍々ゲームで伸びているというが、なるほど欧州はこういうやり方がマーケティング上の意味を持つ土地になったのかと。link

  • 現代の読書はカウンターカルチャー:スマホが、更にはSNSやショート動画が、集中の持続時間を数秒〜数十秒まで削り落とした。結果、数時間まとまった文章に留まること自体が例外的な振る舞いになった。だからこそブッククラブが流行るんだろうし、映画館に行く人がまた増えているというのも同じことかもしれない。年間200冊ほどの読書を続けている私、突然カウンターカルチャーの請負人になった。link

  • 特許放棄の英断が私たちの安全を支えている:1959年、ボルボは3点式シートベルトを発明し、同時にその特許を他メーカーに開放した。以後の推計で救われた命は100万を超える。独占して稼ぐ選択肢があったのに手放したという話は美談として流通しがちだが、彼らは特許収入よりも業界標準を握ることを優先した、とも読める。自動車メーカーにはいろんな知財活用術が眠っているんだろう。link

  • 訃報欄で人生を変える:ノーベル財団は訃報記事誤報によって設立されたと言っても良い。ルドヴィグ・ノーベルの死を、ダイナマイトの発明者として有名な兄・アルフレッドのものと取り違えた新聞社が「死の商人、死す」と書き、それを目にした本人がショックを受け遺言に『財団設立』を書き加えたのがきっかけである。訃報は死を報せる文章ではなく、生き方を採点する文章でもある、というのはよくある『死を思え』系の教訓だ。人生は最後の瞬間ではなく、他人の記憶に残った部分で定義される。自分の訃報を今日書かれたら、何行になり、何が書かれるのだろうか。 link

  • 容積率を捨てた成長都市・ハイデラバード:ハイデラバードは2006年に容積率規制を撤廃し、環状高速道路の整備と組み合わせたことで、高層ビルを拒否する他のインド大都市と違う成長曲線に乗った。そしていまその土地では、65階建て・2棟の『トランプタワー』が建設中である。タワマン規制のど真ん中にある我らが神戸市は、さてどうなることか。link

  • 気候変動が人間の血中成分を変えた:米国NHANES(国民健康栄養調査)データを用いた研究。大気中のCO2濃度が高まり続けたこの30年で、血清重炭酸イオン(HCO₃⁻)は7%上昇し、一方でカルシウム・リンは減少している。上昇率・下降率をそのまま引き延ばすと、50年後に重炭酸イオンは健康範囲の上限に達し、カルシウムとリンは今世紀末に下限に張り付くことになる。気候変動が気温や海面、更にはヒマラヤの氷河に及ぼす影響は目に見えるけれど、体内の恒常性にまで言及する研究は初めてみた。気候変動は、骨密度の低下を通じて将来の医療費を跳ね上がるかもしれない。 link

  • 経口肥満薬で体重1割減:Nature Medicineに載った経口GLP-1受容体作動薬 aleniglipron の第2b相試験結果。過体重・肥満の成人230人を対象に、45mg・90mg・120mgの各群で平均体重減少率は8.2%・9.8%・11.3%、いずれもプラセボ対照で有意だった。すんごいやん。注射から錠剤へという移行は、効き目はもちろん流通簡素化・服薬継続率に大きく貢献する。ヘルスケア革命は続く。Lilyの株は買ったか? link

  • 高くなるのは依頼者がアホだから:アメリカの鉄道・高速道路の建設費がドイツやスウェーデンの1.5〜3倍になる理由はなぜなのか。犯人は人件費でも土地代でもなく、意思決定権限の分散と過度の外部委託にあるという。発注する側に技術的な判断力が残っていないため、コンサルタントと請負業者の見積もりを正しく検算できない。1956年の連邦高速道路法まで遡る制度設計の話でありながら、社内に能力を残さず外に出し続けた組織がどうなるかという哀しきJTCの未来おとぎ話でもある。link

  • 相手のために、悪い知らせは早めに届けよう:伝えにくい話を先延ばしにするとき「相手にとっても辛いだろうから…」と思いやり感情を口にする人がいる。しかしそれはただの回避行動、問題の先延ばしなのではとJustin Welshは指摘する。契約を切る、期待に届いていないと告げる、方針が変わったと知らせる。どれも一度で終わる痛みなのに、問題を先送りにすればするほど時間だけが溶けていく。そして最後に残るのは、修復しようのない断裂である。クライアントワークでもチーム運営でも、悪い知らせを届ける速度がそのまま信頼の総量になる。悪い話が言いづらいなら、関係自体を見直すべきなのである。 link

  • 誤謬論入門 優れた議論の実践ガイド:お客さんのために。ここにのっている12原則・60の誤謬は、知識労働者必読。それらを読み込ませた議論判定キャラをClaude上につくって、日々私をいじめてもらっています。誤謬の名前付けセンスよ。 link

    • 藁人形論法:相手の主張を弱く、極端に、あるいは単純な形へ歪め、その偽物を攻撃する。

    • 井戸に毒を盛る:相手が発言する前から信用できない人物だと印象づけ、その後の発言すべてを疑わしく見せる。

  • 素粒子(ウェルベック):私たちひとりひとりが素粒子であり、本質的な意味でお互いに交わることはない。ショーペンハウアーみがあふれ出ている。 link

  • 都市(シマック):ウェルベックが若いときに読んで印象に残っているSFとして挙げていた、人間が絶滅し犬ばかりになった世界を描いた作品。十分に小型でエネルギー効率抜群の移動手段が開発されたとして、それでもまだ都市という存在は生き残るのだろうか。それとも、不要な密集として、過去の遺産の中に消えていくのだろうか。 link

  • コンプレックスのバッドを考える - BAD PHARMACY:『内的衝動ではなく社会の役割を前提にして動く』上出さんの行動原理に共鳴するものがありました。職人を求める気持ちもわかる。しかし、内面を見つめてもしょうがないという気持ちもある。同性使いなくなるんだしさ。いい仕事をしよう。 link

  • テニス全米予選決勝 錦織圭 vs 坂本怜:世代交代の象徴的試合でした。二人とも激うま。本戦が楽しみ。

  • Presenting Shostakovich:新卒知人に薦めてもらったショスタコーヴィチ、すっかり作業のお供です。盛り上がりと静かな落ち着きと。 link

  • ネパールの鉄砲水、痛ましい。直接の原因は氷河雪崩だが、背景に気候変動があることは確実で、向こう30年で想像もしなかったような災害がどんどん起こるのだろう。もちろん日本でも。気候危機対策、経済学でいう『共有地の悲劇』をど真ん中でいっている。誰もボールを持たないので、当然解決はない。

  • 私の大好きなインターネット。わかるよ、私もこういう作品を受け付けない。
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  • 欠乏にあるときほど人は尊厳を求める。ブロッホは”人はパンのみにて生きるのではない。ほかに何も持っていないときはなおさらそうだ”と言った。シジェクが自称する『穏健な保守派共産主義者』に私もなりたい。そしてあらゆる所に差別を認めよう。
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    人種差別と戦う唯一の方法は、人種差別を普遍化することだ、と私は言います。つまり、誰もが誰についても言及する。ただし真っ先に自分について話すことです。

  • トランプ大統領退任後の米国政治の信頼はどこまで取りもどされるのだろうか。「米国の政治制度は彼のような人を首長に選定しその指示を実行する官僚組織だ」と仕組みの問題であると認識されたなら、トランプはただの病であって、病理によって生み出される別の病によって、2028年以降の世界も当然暗いままだろう。テキサスやカリフォルニアは独立するだろうか。そのとき中国は何をするのだろうか。最も資本主義的であり、機会主義的でもある彼らは、いま計画を立てているはずだ。

  • 石川・富山の大雨はどうなっているだろうか。10月に氷見に行く予定があり、現地を見てこようと思う。たくさん金を落とすぞ。また九州にも行かなくてはいけない。

  • 明日から当社Cobe Associeは9期目。日々努力、日々精進です。お仕事の相談には常にオープンです。お気軽にお声掛けください。

お便りをお待ちしています。

Read the original on cobe.substack.com

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