「赤ちゃん心理学 × 恋愛」
あるストーリーから。
40代。シングルマザー。
2人の子どもを育てるのに必死だった。
朝も夜も仕事をし、給食費を払えず、500円を握りしめていた時もあった。
子どもに不自由はさせたくない。
けれど、頑張っても、頑張っても、お金が出ていく。
そんな中、ひょんなことで彼氏ができた。
10歳年下。
「まさか、この年齢で恋愛ができるなんて」
嬉しかった。
でも、
「子どもたちのお母さんなのに、恋愛してる場合じゃない」
と、心のどこかでささやく声もあった。
彼に会いたい。
でも、子どもたちのごはんを作らないと。
彼に愛されたい。
でも、子どもたちを置いていくような気がする。
「会いたい。でも……」
そんな葛藤の中にいた。
それでも、恋愛が始まったことで、人生に彩りが増えた。
幸せな気持ちになった。
彼と暮らすようになり、だんだん親密になっていくと、
彼は、子どもを優先することを嫌がるようになった。
「俺より子どもたちのほうが大事なんだろ!」
夜、責められる。
「あなたのほうに時間を割いてるよ」
「なんで、それがわからないの?」
何度も喧嘩になった。
だんだん、彼の言葉に違和感を感じるようになった。
でも、好きだから。
その違和感を打ち消してきた。
ある日、大喧嘩になった。
彼は怒って家を飛び出した。
私は心配で、不安で、電話しても出てくれない。
あとでわかったこと。
彼は元カノに連絡し、会っていた。
ものすごい嫉妬。
そして、がっかりした気持ち。
「子持ちの女は、やっぱりダメなんだ」
そう思った。
私は、
「子どもたちを大切にして生きていこう」と思った。
けれど、彼はしばらくすると、
何事もなかったかのように戻ってきた。
そして、また同じことを繰り返す。
切りたいのに、切れない。
別れたいのに、別れられない。
そんな状態が続いた。
私と喧嘩すると、
彼は必ず他の女性に連絡を取り、私の愚痴を言っていたらしい。
私が最も嫌がることをする。
そして、また戻ってくる。
まるで、DVをする人と、そこから離れられない人のようだった。
最初はよかった。
でも、だんだんと彼の言動は、
まるで幼い子どものようになっていった。
「わかるだろ?」
「俺がどんな気持ちか?」
「俺が具合悪い時、
お母さんはすぐあったかいものを作ってくれたのに、
お前はなんで気が利かないんだ?」
「わかるだろ?」
「わかるだろ?」
「俺の気持ち、全部!」
そうやって責められる。
私は思った。
「あれ?」
「なんか、おかしい」
彼は、大人の着ぐるみを着た、まるで赤ちゃん?
そうだ。
彼は、赤ちゃんになっている。
私を、お母さん代わりにしている。
そして、
私もまた、彼の前では、
「赤ちゃんを育てるお母さん」になっている。
彼が赤ちゃんになればなるほど、かわいそうで、
つい母性本能がくすぐられて、
「すべて与えてあげたい」と思ってしまう。
もしかしたら、これは、
私が赤ちゃんだった頃、
お母さんにしてほしかったことを、
彼に与えたい、
という心理なのかもしれない。
この気づきのあとから、彼を、
「大人の時の彼」
「赤ちゃんになってしまった彼」
と、分けて見ることができるようになった。
すると、少しずつ見えるものが変わってきた。
彼が赤ちゃんになってしまうこと自体を、
ただ「悪いこと」と捉えるのではなく、
「ああ、今、赤ちゃんモードになっているんだ」と見る。
でも、彼は、いい大人。
だから、
赤ちゃんになって攻撃的になる彼を、許してはいけない。
これは「しつけ」だ。
私は、彼が離れていくのが怖かった。
愛されなくなるのが怖かった。
だから、
彼に「ダメなことはダメ」と言えなかった。
彼が怒る。
彼が拗ねる。
彼が不機嫌になる。
彼が離れていきそうになる。
すると私は、「かわいそう」と思ってしまう。
そして、また与えてしまう。
また受け入れてしまう。
またお母さん役に戻ってしまう。
でも、
それでは恋愛ではなくなってしまう。
私は、自分の中の「赤ちゃんごころ」に気づき、
イメージで癒し、躾けることを続けた。
「愛されなくなるのが怖い」
「離れていくのが怖い」
「嫌われたくない」
そんな私の中の小さな心を、少しずつ見ていった。
そして、やっと、
彼が赤ちゃんモードになった時、
どんなに暴言を吐かれても、
元カノや他の女性のことをちらつかされても、
断固として、「ダメなものはダメ」
と思えるようになっていった。
彼は、
私をもうお母さん代わりにはできない、
と悟ったのかもしれない。
そして、他に女性をつくって、出ていった。
私は、ほっとした。
そして、そのあと、
子どもたちとの失った時間を思うと、
本当に申し訳ない気持ちになった。
シングルマザーは、ある意味モテる。
淋しさや苦労の隙を見つけ、
「助けたい」と思う男性が寄ってくることがある。
でも、その「助けたい」は、いつか、
「自分を赤ちゃんのように、永遠に愛して!」
という大きな見返りを求めての、
「助けたい」であり、
「愛してる」なのかもしれない。
私は、それがわかった。
私は、子どもたちとの時間を取り戻し、
そして、私自身の人生もしっかり生きよう、
と決めることができた。
私も、赤ちゃんだった。
私にも、
「私を見て」
「私を愛して」
「私を大切にして」
という赤ちゃん心があった。
彼との恋愛のおかげで、
私はそれに気づくことができた。
恋愛からは、本当に多くのことを学べる。
自分が、
どんなふうに愛されたかったのか。
どんなふうに人を愛しているのか。
何が怖いのか。
何を失うのが怖いのか。
そして、自分の中に、
どんな「赤ちゃん心」がいるのか。
恋愛は、自分の心を知るための、
大きな鏡になることがある。
でも、
苦しい恋愛を続ける必要はない。
自分を傷つけ続ける必要もない。
「好きだから」
だけで、
何でも許さなくていい。
相手が赤ちゃんになってしまったとしても、
あなたまでお母さんになる必要はない。
もしかしたら、
私たちは恋愛をしながら、
お互いの中にいる「赤ちゃん」を、
無意識に育て合っているのかもしれない。
「私を見て」
「僕を見て」
「私を一番にして」
「僕の気持ちを全部わかって」
「私を置いていかないで」
そんな赤ちゃん心同士が、恋愛をしている。
でも、
いつまでも赤ちゃん同士でいる必要はない。
自分の中の赤ちゃん心に気づいて、
癒して、
躾けて、
育てていく。
そうすると、
恋愛の形も変わっていく。
もっと自由に、
もっと対等に、
もっと安心して、
人を愛せるようになる。
苦しい恋愛から卒業した先には、
もっと自由で、
もっと素晴らしい世界が待っている。
赤ちゃん同士の恋愛から、
あなたはいつ卒業しますか?
西谷真美の赤ちゃん心理学
「赤ちゃん心」「バーストラウマ」「母子分離不安」など、
赤ちゃんの心から、人間関係や恋愛、人生を見つめる、
「赤ちゃん心理学」について書いています。

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