5月の終わりから6月初めにかけて、トランプ大統領とイーロン・マスクのバトルが勃発したのは記憶に新しい。
きっかけはトランプ政権の掲げる予算法案、いわゆる「OBBB(One Big Beautiful Bill=大きな美しい法案)」についてマスクがケチをつけたことだった。
5月22日、下院は215対214対でOBBBを可決した。
5月27日、マスクはCBSのインタビューでOBBBを批判し「失望した」と述べた。その直後に特別公務員としての130日間の期限が切れるため、政権を去ることになったのも騒ぎを大きくした要因の一つだった。左派メディアはケンカ別れのように書き立てた。
5月30日、マスクが特別公務員としての最後の日、右目にアザがある状態でホワイトハウスに登場し挨拶した。トランプ大統領は「本当に去るわけではない」といい、今後もホワイトハウスを「行ったり来たり」すると述べた。
スティーブ・バノンはワシントンポストに、マスクがホワイトハウスでベッセント財務長官と言い合いになり、暴力的なケンカになったと主張した。右目のアザはその時に出来たものだったのか?
6月3日、マスクはXで「申し訳ないがもう我慢できない。この巨大で、法外で、豚肉だらけの議会支出法案は醜悪極まりない。この法案に賛成した人たちは恥を知れ。 わかっているはずだ」と投稿し、その後も批判し続けた。
マスクがOBBBを批判したのは、その裏に別の理由があったと言われた。
その理由とは、EV補助金をカットされたこと、特別公務員の期限延長を断られたこと、連邦航空局のシステムへのスターリンク導入を断られたこと、盟友のジャレッド・アイザックマンのNASA長官指名を撤回されたこと、などだという。
6月5日、トランプ大統領は「イーロンのことはずっと好きだった」ので「失望している」と述べた。またマスクは電気自動車への補助金削減のためにOBBBに批判的だったとコメントした。
またトランプ大統領はABCニュースに対し、マスクは「正気を失っている」と語り、マスクと話すことに興味はないと述べた。
その後マスクはトランプ大統領が「エプスタイン文書に載っているから文書が公開されないのだ」と批判し、さらにトランプの弾劾を求める投稿をしたりしたが、これらの投稿は後に削除された。
6月11日、マスクはXを通じてトランプ氏に関するいくつかの投稿が「行き過ぎた」ものであり「後悔している」と投稿し、トランプ大統領はその謝罪に感謝の意を示した。
これでバトルは収束したかに見えた。
しかし最近になって、OBBBの成立をめぐって議会が大詰めを迎える中、イーロン・マスクがまた吠えだした。
さすがに今回はトランプ大統領への個人攻撃ではなく、純粋に法案に対する不満をぶつけている。
6月28日、マスクはXで「最新の上院草案は、アメリカ国内の何百万もの雇用を破壊し、わが国に計り知れない戦略的損害をもたらすだろう」と投稿し、「この法案は共和党の政治的自殺行為だ」とも書いた。
一方トランプ大統領はTruth SOCIALでマスクのことを「バカげている」といい、「私がEV義務化に強く反対していることを知っていた」と述べた。
「イーロン・マスクは、彼が私を大統領選に強く推薦するずっと前から、私がEV義務化に強く反対していることを知っていた。ばかげているし、私の選挙運動の主要な部分だった。電気自動車は良いが、誰もが所有することを強制されるべきではない。補助金がなければ、イーロンはおそらく店をたたんで南アフリカに帰らなければならないだろう。ロケット打ち上げも、人工衛星も、電気自動車の生産もなくなる。 DOGEにこのことをよくよく調べてもらうべきだろう。大金が節約できる!」https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/114776149269773065
イーロン・マスクは攻撃の手を緩めない。
「史上最大の債務増額に即座に賛成票を投じたすべての国会議員は、恥じて頭を垂れるべきだ!そして私がこの世で最後にすることになっても、彼らは来年の予備選で敗北するだろう。」
https://x.com/elonmusk/status/1939776586989150590
そして新党の設立をほのめかした。
「この非常識な歳出法案が通れば、翌日にはアメリカ党が結成されるだろう。私たちの国には、民主党・共和党の独裁に代わる政党が必要だ。」https://x.com/elonmusk/status/1939806847504105683
実際イーロン・マスクは2024年に「アメリカPAC」という政治資金管理団体を設立しており、2億6000万ドル以上を集めた実績がある。そのうち8800万ドル以上がトランプ支援のために使われた。
これを書いている時点でまだOBBBは成立していない。
トランプ大統領は独立記念日の7月4日までの成立を目指しているという。ただこの法案がイーロン・マスクの言うように債務を増加させるかはまだなんとも言えない。
OBBBには減税が盛り込まれており、それによってむしろ債務が増加するのか、経済が成長して税収が上がるのかがまだ分からないという。
議会予算局(CBO)の公式試算によれば債務は増えると見積もっており、一方で経済諮問委員会(CEA)は「経済成長で債務が減る」と主張している。
いずれにしても長期的な債務増加リスクは依然として高いとする見方が強いようだ。
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