
AIは、部下として使うより、部署として使ったほうが、うまくいきます。
いきなり結論から言いましたが、これは最近、高知でゆーき丸さんと話していて、頭をなぐられたような気持ちになった話です。
私はこれまで、AIに対して、1つずつ仕事を頼んでいました。
台本を書いてください。
画像を作ってください。
投稿文を考えてください。
販売ページを確認してください。
そして、返ってきたものを自分で見て、また別のAIに相談する。
これを、ずっと繰り返していました。
文章の相談は、このAI。
画像の相談は、あのAI。
SNSの相談は、また別のAI。
自分が全部の窓口になって、1つずつ指示を出して、1つずつ返事を受け取る。
一見すると、AIをたくさん使えているように見えます。
でも、実際には、私のところで仕事が渋滞していました。
AIを増やしたのに、私の負担は減っていない。
むしろ、確認することと、指示を出すことが増えている。
これ、会社にたとえると、かなりおかしな状態です。
10人の部下がいるのに、課長が1人ずつ席まで行って、すべての作業を直接確認している。
営業の進み具合を聞いたあと、制作担当のところへ行き、制作の相談が終わったら、経理の確認へ行く。
その途中で、別の担当から質問が来る。
課長は、ずっと歩き回っている。
それでは、課長の仕事が進みません。
そして、まさにそれを、私はAI相手にやっていました。
今日は、そんな話をさせてください。
これまでの私は、AIを「優秀な部下」として見ていました。
自分が仕事を頼めば、すぐに答えを出してくれる。
自分が細かく指示すれば、その通りに作業してくれる。
分からないことがあれば、自分から質問する。
そんなイメージです。
もちろん、これは間違いではありません。
AIは便利です。
文章も書ける。
画像のアイデアも出せる。
コードも作れる。
情報を整理することもできる。
自分の手だけでは時間がかかる作業を、かなり速く進めてくれます。
ただ、AIを部下として使うと、どうしても自分が直接指示を出すことになります。
「次はこれをやってください」
「この部分を修正してください」
「では、今度はこの情報を使って別のものを作ってください」
このやりとりを、担当ごとに繰り返す。
1回1回は、それほど大変ではありません。
でも、仕事の数が増えると、話が変わります。
教材を作るだけでも、中身を考える仕事があります。
説明文を書く仕事があります。
画像を作る仕事があります。
販売ページを用意する仕事があります。
登録者へメールを送る仕事があります。
発売日に告知する仕事があります。
質問が来たときに答える仕事もあります。
これを全部、自分が個別に指示していたら、当然、どこかで止まります。
しかも、作業そのものより、作業と作業の間にある「説明」に時間がかかります。
毎回、自分の目的を説明する。
これまでの経緯を説明する。
どこまで進んでいるか説明する。
今回の相談が、全体の中でどういう位置づけなのか説明する。
この前提の共有が、地味に重いんです。
私も、毎回のように同じことを説明していました。
そのときは、必要だからやっていると思っていた。
でも、あとから考えると、同じ会社の中で、毎回初対面のように説明していたわけです。
「今回の目的は、こうです」
「この仕事は、こういう読者に届けるものです」
「ここまで終わっていて、次にこれをやります」
毎回これをやっていたら、そりゃあ疲れます。
そして、問題はAIの能力不足ではありませんでした。
私が、組織の設計をしていなかったことです。
仕事を頼む相手を増やすだけで、全体を見て指揮する役割を置いていなかった。
だから、すべての情報が私のところへ集まっていました。
私が確認しないと進まない。
私が返信しないと止まる。
私が判断しないと、次の担当へ渡せない。
つまり、私はAIを使っていたのではなく、AI同士の間に立って、ずっと交通整理をしていたんです。
高知で教わった考え方は、シンプルでした。
まず、目的を1つ決める。
そして、その目的に関係する仕事を、1つのプロジェクトへまとめる。
そこに、プロジェクトマネージャーを置く。
これだけです。
たとえば、「9月5日に教材を発売する」という目的があるとします。
この目的に関係する仕事を、全部、1つのプロジェクトに入れます。
教材の中身を作る。
使い方を整理する。
販売ページを作る。
事前登録の案内を作る。
登録者へ送るメールを準備する。
発売日にSNSで告知する。
購入後の案内を用意する。
必要な担当を洗い出して、役割を分ける。
そのうえで、いちばん頭のいいAIを、プロジェクトマネージャーに置きます。
ここは、あまりケチらないほうがいいと思います。
すべての作業を高性能なAIにやらせる必要はありません。
しかし、全体の目的を理解して、優先順位をつけ、担当を決め、進み具合を確認する役割には、能力の高いAIを置いたほうがいい。
マネージャーの仕事は、単純な作業ではありません。
全体を見ます。
目的から外れていないか確認します。
今やるべき仕事と、あとでいい仕事を分けます。
足りない担当があれば追加します。
反対に、必要のない作業があれば止めます。
そして、自分に必要な確認だけを持ってきます。
ここが、これまでと大きく違うところです。
自分がすべての担当と直接やりとりするのではありません。
マネージャーに「この目的を達成するための体制を作ってください」と頼む。
マネージャーが、担当を決める。
担当が作業を進める。
問題があれば、マネージャーが整理して、自分に確認する。
自分が見るのは、全体の方向と、重要な判断だけです。
実際にこの形を考えてみると、担当は意外と多くなります。
教材の内容を作る担当。
初心者が迷わないように手順を整理する担当。
販売ページの文章を作る担当。
説明用の画像を作る担当。
事前登録のメールを作る担当。
SNSの告知文を作る担当。
発売後の質問を整理する担当。
私は、このリストを見たとき、少し笑ってしまいました。
「ああ、これを全部、今まで自分1人でやっていたのか」と。
もちろん、完全に自分が何もしなくていいわけではありません。
最終的な判断は、自分がします。
読者に届けたいものか。
自分が責任を持って紹介できるものか。
内容に間違いはないか。
自分の体験や考えが、きちんと入っているか。
そこは、AIに丸投げしないほうがいい。
AIは便利ですが、最終チェックでは、自分の体験、感情、それを言う理由、読者が抱えている課題を確認する必要があります。
ただし、すべての担当に自分が直接入り込む必要はありません。
自分は社長、あるいは事業責任者として、全体を見る。
細かい仕事は、部署に任せる。
この距離感が大事でした。
この組織化には、もう1つメリットがあります。
費用を抑えられることです。
頭のいいAIほど、料金が高くなる傾向があります。
毎月の支払いを見ていると、「これを全部の作業に使い続けるのは、なかなか勇気がいるな」と思うことがあります。
文章の質を上げたい。
考える力も借りたい。
できるだけ賢いAIを使いたい。
そう思うのは自然です。
でも、すべての仕事に同じ性能が必要なわけではありません。
全体を考える。
複数の作業を整理する。
優先順位を決める。
判断が必要なところを見つける。
こうした仕事は、高性能なAIに任せる価値があります。
一方で、決まった手順を繰り返すだけの仕事もあります。
指定された形式に文章を整える。
決められたサイズで画像を作る。
情報を表にまとめる。
同じ条件で複数の案を出す。
こうした作業なら、比較的安いAIでも十分にできます。
全員に、いちばん良い席を用意する必要はありません。
会社でも、社長と事務担当では、求められる役割が違います。
すべての人に同じ能力を求めるのではなく、それぞれに合った仕事を任せる。
AIも、同じように考えられます。
高性能なAIを1台、指揮をとる役割に置く。
実際の作業は、安いAIや、軽いモデルに任せる。
これだけで、使い方が変わります。
私はこれまで、1つの仕事を頼むたびに、いちばん性能の高いAIを使おうとしていました。
「どうせなら、賢いほうがいい」と思っていたからです。
でも、簡単な作業まで高性能なAIに任せていたら、費用は増えていきます。
それでいて、自分が全部のやりとりをしていたので、時間も減りません。
これは、かなりもったいない使い方でした。
もちろん、安いAIなら何でもいいという話ではありません。
品質が必要な仕事なら、確認が必要です。
重要な文章や、外部へ出すものは、自分の目でチェックする。
事実確認が必要なものは、別の方法でも確認する。
AIに任せたから安心、ではありません。
でも、「考える仕事」と「手を動かす仕事」を分けるだけで、使う場所が見えてきます。
私は、この考え方を、そのまま自分の環境にも入れ始めました。
第一号は、専属のデザイナーです。
デザインに関する資料を集める部屋を作って、そこにマネージャーを置きました。
ブログやアプリの見た目が、なんとなくダサい。
でも、どこを直せばいいのか、自分では判断できない。
そんなときに、その部屋へ相談しにいきます。
毎回、新しいAIを開いて、最初から状況を説明するのではありません。
この部屋には、これまでのデザイン資料があります。
自分の好みがあります。
避けたい表現があります。
過去に使った色や、目指している雰囲気があります。
つまり、専門部署としての前提が、あらかじめ置かれている。
だから、相談のたびに説明する量が減ります。
「この画面を、もう少し見やすくしたい」
「この画像がなんとなく古く見える」
「このブログに合う見出しのデザインを考えたい」
そう伝えるだけで、前提を知っている担当が考えてくれる。
この差は、かなり大きいです。
AIを使うたびに、自分の状況を最初から説明する。
過去の資料を探して、貼り付ける。
前回の回答を見せる。
そのうえで、今回の相談を書く。
この準備だけで、気力がなくなる日があります。
だから、専門部署を作る。
デザインならデザイン部。
文章なら文章部。
教材制作なら教材制作部。
発信なら発信部。
毎回、全部を説明するのではなく、そのテーマに必要な情報を集めた場所を作っておく。
そうすると、AIを「その場限りの相談相手」ではなく、「継続的に働くチーム」として扱えます。
ここには、少し環境づくりが必要です。
資料を整理する。
役割を決める。
どんな判断基準で動くか書いておく。
やってはいけないことも伝える。
最初は、少し面倒です。
私も、「ここまで準備するくらいなら、直接聞いたほうが早いのでは」と思いました。
でも、同じ相談を何度もすることを考えると、最初に部屋を作ったほうが、あとから楽になります。
最初に時間を使って、あとで繰り返しを減らす。
これは、AIに限らず、仕事の仕組み化でも同じです。
この話を聞いて、私はAIの使い方だけを考えていたわけではありません。
会社やチームでの仕事も、同じではないかと思いました。
忙しい人ほど、連絡が自分を通っていませんか。
自分が確認しないと進まない。
自分が返信しないと止まる。
自分が判断しないと、誰も動けない。
本人は、責任感を持ってやっているつもりです。
周りも、「この人に聞けば分かる」と思っている。
だから、相談が集まる。
相談が集まるから、さらに忙しくなる。
忙しくなるから、細かいことまで自分で見てしまう。
結果として、チーム全体の流れが遅くなる。
これは、本人が悪いというより、窓口が1つしかないことが問題です。
自分が全部を把握していると、安心ではあります。
何が起きているか分かる。
変な方向へ進んでいないか確認できる。
失敗を早く見つけられる。
でも、その安心と引き換えに、自分がボトルネックになります。
自分がいないと、何も進まない組織になる。
それは、頼られているようで、実は危険な状態です。
AIを部署として使う考え方は、そのことにも気づかせてくれました。
全部を自分のところへ集めない。
目的ごとに責任者を置く。
責任者が担当を動かす。
自分は、重要な判断だけをする。
もちろん、人間の組織では、AIのように簡単に役割を変えられないこともあります。
相手の気持ちもあります。
権限の問題もあります。
すぐにすべてを任せられるわけではありません。
それでも、「自分が直接やりとりしないと進まない仕事は何か」と考えるだけで、改善の入口が見えてきます。
自分が抱えている仕事を、部署に分ける。
その部署の責任者を決める。
責任者に渡せる情報を整理する。
これだけでも、仕事の流れは変わります。
それではここで、今日のタスクです。
いま自分が抱えている仕事を、1つだけ選んでください。
教材制作でもいいです。
SNSの発信でもいいです。
営業でも、家事でも、勉強でも構いません。
そして、その仕事を「自分の部署で進める」としたら、どんな担当が必要かを書き出してみてください。
たとえば、教材を発売するなら、
- 中身を作る担当
- 手順を整理する担当
- デザインを作る担当
- 販売ページを作る担当
- 告知文を作る担当
- 登録者へ連絡する担当
- 発売後の質問を整理する担当
というように分けられます。
最初から完璧に分けなくて大丈夫です。
思いつく範囲で構いません。
その中から、全体を見て指揮するマネージャーを1つ決める。
次に、実際の作業をする担当を決める。
ここで、すべての担当に高性能なAIを置く必要はありません。
判断が多い仕事には、能力の高いAI。
決まった作業には、安いAI。
自分が最後に確認する仕事。
この3つに分けるだけでも、かなり整理されます。
そして、一番大事なのは、自分が各担当と直接やりとりしない形を試すことです。
マネージャーに目的を伝える。
体制を作ってもらう。
必要な確認だけ、自分のところへ持ってきてもらう。
最初は、少し不安になると思います。
自分で直接聞いたほうが早い。
自分で全部見たほうが安心。
そう感じるかもしれません。
私も、そうでした。
でも、その不安を抱えたままでも、1度試してみる価値はあります。
自分が頑張って全部を回すより、組織として動かしたほうが、大きな仕事に取り組みやすくなります。
AIを増やす前に、役割を分ける。
性能を上げる前に、流れを作る。
そして、自分が渋滞の原因になっていないか、一度確認する。
これが、今回の私の発見でした。
AIは、単体で使うだけでも便利です。
でも、部署として組み合わせたとき、使い方の次元が変わります。
あなたの仕事の中にも、すでに部署に分けられるものがあるはずです。
まずは、1つの仕事を紙に書き出してみてください。
そこから、AI組織化が始まります。
それでは、次回のおおかみ通信もお楽しみに!
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