
あなたは、新しいツールを使うとき、最初に説明書を読みますか?
私は、ほとんど読みません。
まず触ります。
ボタンを押してみる。
画面を動かしてみる。
分からないところが出てきたら、そこで初めて調べる。
たぶん、私だけではないと思います。
会社で新しい業務ツールを渡されたときも、最初から分厚い説明書を読む人は、そんなに多くありません。
初回設定だけは、仕方なく確認する。
でも、そのあとは、まず触る。
触っていれば、なんとなく使い方が分かるように作られていることを期待します。
だから私は、説明書を読まないと使えないツールを見ると、かなり厳しい目で見てしまいます。
どれだけ多機能でも、どれだけ高性能でも、使い始める前に勉強が必要なら、広がりにくい。
使う人にやさしい画面。
直感的に分かる導線。
迷っても戻れる設計。
こういうものが、ユーザーファーストなのだと思っていました。
でも、最近、その考え方を教材づくりに持ち込んで、少し考えが変わりました。
人が読むための教材と、AIに読ませて使うための教材は、同じ作り方をしなくていい。
むしろ、AIに使わせることが目的なら、AIファーストで作ったほうが、もっと早く、もっと気軽に形にできる。
今日は、そんな話をさせてください。
ユーザーファーストの分かりやすい例は、iPhoneです。
iPhoneには、分厚い説明書が付いていません。
もちろん、細かい機能まで調べれば、公式の解説はあります。
でも、最初に説明書を読破しなくても、普通に使い始められる。
電話をかける。
写真を撮る。
アプリを開く。
文字を入力する。
画面をスクロールする。
多くのことは、触っていれば分かります。
実は私、しばらくの間、アプリの閉じ方を知りませんでした。
画面の下から上へスワイプすると、開いているアプリの一覧を表示できる。
そこからアプリを閉じられる。
この操作を知らないまま、ずっと使っていたんです。
でも、特に困りませんでした。
知らない機能があっても、基本的な使い方はできる。
必要になったときに、自然と発見できる。
この状態は、かなりすごいと思います。
使う人が、すべての機能を理解していなくても、目的を達成できる。
これが、人にやさしい道具です。
反対に、最初から専門用語を覚えないといけない。
設定項目の意味を全部理解しないと先へ進めない。
何かをしたいのに、どの画面を開けばいいのか分からない。
こういうツールは、使う前に疲れてしまいます。
便利なはずなのに、便利になるまでの道のりが長い。
この差は、とても大きい。
だから、アプリやサービスを作るなら、ユーザーファーストが大事です。
使う人が迷わないようにする。
説明しなくても伝わるようにする。
初めて触る人でも、最低限の目的を達成できるようにする。
ここまでは、今でも変わりません。
ただ、教材となると、相手が人間とは限らなくなりました。
最近、私は教材を作りました。
これまでにも教材を出したことがあります。
最初の教材は、かなり作り込みました。
人が読む前提だったからです。
文章の流れを整える。
初心者がつまずかない順番に並べる。
説明を足す。
言い回しを柔らかくする。
図やイラストを入れる。
読んでいて不安にならないように、何度も見直す。
もちろん、こうやって作ること自体は悪くありません。
むしろ、人に読んでもらうなら、必要な作業です。
読者がどこで迷うかを考える。
何を知らない状態で読むのかを想像する。
どの言葉なら誤解されないかを確認する。
この積み重ねによって、読みやすい教材になります。
ただ、ものすごく時間がかかります。
文章として自然にするために、何度も書き直す。
説明の順番を入れ替える。
同じ内容を別の角度から説明する。
「この表現は分かりにくいかもしれない」と思って、また修正する。
作っている途中で、どこまで整えれば完成なのか、分からなくなることもあります。
私は、そこにかなりの時間を使ってきました。
ところが、最近作った教材は、少し違いました。
最初から、人間が読み物として楽しむものではなく、AIに読ませて使うものとして設計したんです。
教材を購入した人が、全部を自分で読んで理解する。
そのあと、自分の環境に合わせて実践する。
そういう前提ではありません。
まず教材をAIに渡す。
AIに内容を理解させる。
そして、自分の目的に合わせて、AIから手順を出してもらう。
この使い方を想定しました。
そうすると、文章に対する考え方が変わります。
日本語として美しいか。
読み物として気持ちいいか。
説明の順番が完璧か。
もちろん、最低限の分かりやすさは必要です。
しかし、人間が最初から最後まで読むことを前提にしなくていい。
AIが内容を読み取り、必要な部分を取り出し、足りない情報を質問してくれるなら、すべてを丁寧な文章にする必要はありません。
箇条書きでもいい。
途中で表現が揺れていてもいい。
自分用のメモに近い形でもいい。
AIが意味を理解できるなら、教材として成立する。
この割り切りができたことで、作業の速度が大きく変わりました。
最近出した教材は、作ると決めてから、3日で販売まで進めました。
3日というと、かなり短く聞こえるかもしれません。
私自身も、「本当にこれで出していいのか」と思いました。
これまでなら、もっと整えていたはずです。
もっと説明を増やしていた。
もっと構成を見直していた。
もっと画像を作っていた。
もっと初心者向けの補足を入れていた。
そして、いつまでも完成しなかった可能性があります。
教材は、作ろうと思えば、いくらでも手を入れられます。
文章を直す。
例を増やす。
画像を追加する。
見出しを変える。
販売ページを整える。
この作業には、終わりがありません。
だから、どこかで「これで出す」と決めないと、ずっと準備中になります。
今回の教材は、AIに読ませる前提を最初に決めていた。
そのため、文章をきれいにする作業に、必要以上の時間をかけませんでした。
自分がAIへ伝えたいことを、まず並べる。
作業の順番を書く。
使うツールを書く。
うまくいかなかったときの対処を書く。
判断に迷うところは、迷うと書く。
自分の頭の中にある手順を、完璧な文章に変換しようとせず、そのまま外へ出す。
それをAIが読める形に整える。
必要なら、AIに「この内容を実行手順に整理してください」と頼む。
このやり方だと、自分が最初から完成品を書く必要がありません。
自分は素材を出す。
AIが構造化する。
AIが不足している情報を質問する。
自分が答える。
AIがさらに整える。
このやりとりを繰り返していけば、教材の形になっていきます。
ここで、誤解してほしくないことがあります。
AIファーストというのは、雑に作っていいという意味ではありません。
内容の間違いを放置していいわけでもない。
読者に不親切でいいわけでもない。
ただ、誰にとっての使いやすさを優先するのかを、最初に決めるということです。
人間が読むなら、人間にとっての読みやすさを優先する。
AIが読むなら、AIが正しく理解して実行できる構造を優先する。
この目的を混ぜてしまうと、作り手が苦しくなります。
人にも美しく、AIにも正確で、初心者にもやさしく、専門家にも深く。
全部を満たそうとすると、教材はどんどん重くなる。
結果として、出せなくなる。
ここを、私はかなり反省しています。
良いものを作りたいと思うほど、完成まで時間がかかる。
でも、完成しないものは、誰の役にも立ちません。
今回の教材は、正直に言うと、初心者の人がそのまま読んで、すぐ理解できる内容ではないと思います。
最初に「AIに読ませてください」と書いてあります。
この前提があるから、あの形で販売できました。
もし「人間が最初から読む教材」として売るなら、もっと説明が必要です。
用語の解説も必要です。
具体例も増やしたほうがいい。
迷いやすい箇所に、補足の画像も入れたい。
読者が途中で置いていかれないように、順番もかなり調整する必要があります。
一方で、AIに読ませるなら、AIが分からないところを質問できます。
「この手順の目的は何ですか」
「この作業は、どのタイミングで行いますか」
「この条件の場合は、どちらを選びますか」
そうやって、読み手が確認してくれる。
人間向けの教材では、書き手が先回りして説明する必要があります。
AI向けの教材では、AIから質問されることを前提に、情報を置いておけばいい。
この違いは、かなり大きいです。
たとえば、料理のレシピを考えてみてください。
人が読むレシピなら、「玉ねぎを薄切りにする」と書くだけでなく、薄切りとはどのくらいの厚さなのか、どのタイミングで鍋に入れるのか、焦がさないためにはどうするのかまで、ある程度説明したほうが親切です。
でも、AIに渡すレシピなら、「玉ねぎ2個を薄切り。弱火で10分炒める。焦げそうなら火を弱める」といった、情報のまとまりがあれば、AIが手順に整理できます。
必要なら、「薄切りの厚さは何ミリですか」と聞いてくる。
その質問に答えれば、さらに具体的になる。
最初から全部を読み物として仕上げなくても、対話で補えるわけです。
この方法を使えば、知識や経験を教材にするハードルは、かなり下がります。
頭の中では分かっている。
でも、文章にするのが苦手。
教材を作りたいけれど、構成を考えるのが大変。
そんな人でも、まずは音声入力で、思いつくままに話してみる。
AIに整理させる。
足りない部分を質問させる。
その回答を追加する。
これで、教材の核は作れます。
最初から完成された文章を書こうとしないことです。
きれいな文章を書く能力と、価値ある経験を持っていることは、別の能力です。
文章が上手ではなくても、経験はある。
順番が整理されていなくても、知識はある。
その素材を、AIが扱える形に変換してくれる。
だからこそ、AIファーストという設計が活きてきます。
もちろん、AIに読ませるからといって、すべてをAI任せにするつもりはありません。
ここは、かなり大切です。
AIは、情報を整理するのが得意です。
文章を構造化する。
抜けている部分を見つける。
手順を並べ替える。
複数の案を出す。
読み手に合わせて表現を変える。
こういう作業は、非常に頼りになります。
一方で、その教材を作った理由や、自分が実際に失敗した経験、読者に届けたい感情まで、完全に任せていいわけではありません。
AIは、もっともらしい文章を作れます。
筋の通った説明もできます。
でも、それが自分の体験から出ている言葉なのか。
本当に自分が責任を持って言えることなのか。
読者が困っていることに、ちゃんと届いているのか。
最後に確認するのは、自分です。
ここを省いてしまうと、情報は整っているのに、どこか軽い文章になります。
文章としては、まとまっている。
内容も、間違ってはいない。
でも、なぜか本人の言葉に見えない。
そういう状態になることがあります。
私は、AIを便利に使うほど、最後の確認が重要になると思っています。
AIに任せる範囲を広げる。
その分、自分は重要な部分を見る。
自分の体験。
自分の感情。
それを言う理由。
読者が抱えている課題。
この4つは、必ず確認する。
AIに作ってもらった教材なら、なおさらです。
「AIに読ませれば動く」という仕組みだけでなく、「なぜ自分がこれを作ったのか」が残っているかを見る。
そこまでできて、初めてAIファーストの教材になるのだと思います。
それではここで、今日のタスクです。
あなたが誰かに教えられることを、1つだけ選んでください。
仕事の手順でもいい。
趣味のやり方でもいい。
過去に失敗して、そこから学んだことでもいい。
そして、それを人間向けの文章にしようとせず、AI向けのメモとして書いてみてください。
次の5項目だけで構いません。
- 何を達成するための手順か
- 最初に何を準備するか
- 上から順番に何をするか
- 途中で迷いやすいポイントは何か
- 最後に、どんな状態になれば完了か
文章をきれいにしなくて大丈夫です。
箇条書きでいい。
思いついた順番でいい。
途中に「ここはまだ説明できない」と書いてもいい。
そのメモをAIに渡して、こう聞いてみてください。
「この内容を、実行できる手順に整理してください。不足している情報があれば質問してください」
AIから質問が返ってきたら、分かる範囲で答えます。
そのやりとりを何度か繰り返すと、最初は雑だったメモが、少しずつ使える形になります。
今日やるのは、教材を完成させることではありません。
自分の知識を、AIに渡せる形へ変換してみることです。
人に読ませるために、最初から美しい文章を作る。
その前に、AIに理解させるための素材を出してみる。
この順番に変えるだけで、書くことへの抵抗は、かなり小さくなるはずです。
ユーザーファーストが終わった、と言いたいわけではありません。
人に届けるサービスや、人が読む教材では、これからもユーザーファーストは大切です。
ただ、AIが知識を受け取り、実行し、変換する時代になった。
そのとき、すべてを人間向けに整える必要はない。
AIに伝われば、まずは前へ進める。
この感覚を持っておくと、作れるものが増えます。
そして、出せる速度も変わります。
完璧な教材を作ってから販売するのではなく、AIと一緒に使いながら改善していく。
私は、これからもこの方向で試していきます。
それでは、次回のおおかみ通信もお楽しみに!
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