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こーべ通信 · Aug 16, 2026

コンサルタントに必要なのは,様々な従順さ.

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Nozomi Tanaka / 田中志 · こーべ通信

紙は重いものだな、と彼は思った。これではゴミ置き場まで何往復もしなくてはならない。何か月、いや、何年にもわたる仕事を彼は破壊しようとしていた。はるか後年、有名に一一実際のところ、とてつもなく有名になったときーー、ジェドは幾度も、あなたにとって<アーティスト>であるとは何を意味しますかと聞かれることになった。格別面白い答えも、独創的な答えも思いつかなかったが、彼にいえることがひとつだけあり、従ってインタビューを受けるたびにそれをくり返すこととなったーアーティストであるとは、彼にとっては何よりも、<従順な>何者かであるということだった

それは神秘的な、予見できない、それゆえいかなる宗教的信仰も抜きで直観としか呼びようのない種類のメッセージに対する従順さなのだが、とはいえ、そのメッセージは有無をいわさぬ、絶対的なやり方で命令を下し、それを逃れる術をまったく与えないしさもなければ、完全さの概念も自尊心も、そっくり失われてしまうのである。

(ミシェル・ウェルベック『地図と領土』ちくま文庫,p108.太字は田中による)

コンサルタントとしての仕事に重要なのは,圧倒的な従順さである.

この職業で働く上では特段何の資格も必要ではない.作家やアーティスト,インフルエンサーや家事手伝いと同じように,今日からでも名乗り始めることができる.それでも多くの人は,コンサルティングファームに所属することからこの職種への道を歩み始めるだろう.

コンサルティングファームへの入社直後,まともな人間とみなされるために大切なこととは何だろうか.とにかくボスに従順であること,それのみだ.

ファームに入ったからといって、頭の中から優れたアイディアが湧いてきたり、突然、顧客に価値ある働きができるようになったりするわけではない。コンサル御用達のフレームワークや分析手法なら、書籍にもネットにもいくらでも転がっている。それらを脳にぱんぱんに詰め込んでいたところで大して役には立たない。

普通に動く脳と,空っぽのカレンダー(つまり大量の稼働時間)と,Yesと「はい」が言える口だけを携えていこう.Noと「いいえ」は3年ほど自宅に保管しておくのがおすすめです.

そうやって5-6年働いていく.ボスに従順であり続ければ(その間に脳や口,カレンダーが破壊されていなければ)無事に昇進することだろう.さらに数年働く.徐々に,新人のときに自らが仕えたボスと同じような職階に至る.

そこではたと気づく.いまから自分は何に対して従順であれば良いのだろうか.直接指示をしてくれる人はいない。もちろんマニュアルもない。誰もはっきりと「こうだよ」とは言ってくれない。Yesや「はい」を向ける対象は、ある日突然消え去る。

上司に従順?
週に1時間しかこのプロジェクトのことを考えていない上役に何を期待できるだろう.

顧客に従順?
そんなコンサルタントに何の価値があるのか.

ファクトや分析に従順?
それらがどこかに客観的な姿のまま転がっていると信じるほど、まだ青いのか。

どんな物事でも、数年真剣に取り組んでいると、直感のようなものが生まれてくる。

うなぎ屋の親父は、焼き加減を毎回タイマーだけで決めているわけではない。熟練した農家も、センサーの数字だけを見て収穫日を決めているわけではない。目の前のわずかな違いから、何かを感じ取る。

本人にも、その判断の根拠をすべて言葉にできるわけではない。大量の経験がどこかで圧縮され、「今日はこうだ」「これは違う」という形で身体が反応する。彼らは、その直感に極めて従順である。

コンサルタントとして数年働いていれば、事業について、あるいは組織について、同じような直感を持つようになるだろう。調べものもする。分析もする。数字も見る。けれど、実思考の時系列は、資料に書いてある順番とは違うことが多い。

資料には「市場を分析した結果、Aという結論に至りました」と書かれている。だが、本当はその前に「たぶんAだ」なんなら「まず間違いなくAだろう」という天啓がある。そうとしか思えない何かが、最初に生まれている。

もちろん、直感は間違う。だからこそ”分析”的視点も必要だ。

ただし分析とは、ゼロから答えを生み出す何かではない。直感を壊し再構築するための道具である。調べ、数字を集め、反証し、磨き上がった直感を、なんとか言語と図で他人に説明できる形にするのが私たちの仕事である。

直感など必要ない、というコンサルタントは嘘である。ロジカルシンキングとは,仮説検証の道具であると同時に,高度な屁理屈の技術である。

結局のところ、コンサルタントは最後まで従順であればいい。ただし、従う相手が変わっていくべきであることを忘れてはいけない.

お便りをお待ちしています.

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    熟議があれば財政民主主義が強化されるとみなすのは相当楽観的である。財政民主主義を妨げるのは、単に情報が公開されないことだけではない。場のルールがあらかじめ示されないこと、誰を呼ぶかによって論点が方向づけられること、どこまでが既定路線なのかが曖昧にされること、専門家の配置によって「専門知」のバランスがつくられること、そして別の論点を焦点化することで、当初の争点が後景に退くこと。今回の国民会議には、こうした問題が重なっていた。(p18)

  • 闘争領域の拡大:いまやフランス文学界の巨人となったミシェル・ウェルベックの小説初作.金はあるのに生に何の充実もない,どこにも救いがないお話しなのだけど,不思議に悲劇という感じはしない.ウェルベックがショーペンハウアーにハマった理由がここにある.主人公友人として登場する司祭が言うように,確かに現代には活力が足りない.だからこそ「元気があれば何でもできる」ようになっているのだ. link

    話は彼の持論に突入する。我々の文明は活力の涸渇に苦しんでいるのだ、と彼は言う。人の生きる意欲が絶大だったルイ十四世の時代には、文化は声高に、快楽や肉欲を否定し、世俗に生きても不完全な悦びしか得られない、真の至福の源は神にこそあるのだ、と執拗に繰り返した。そんな説教は今の時代にはもう絶対に通用しない。我々にはアヴァンチュールとエロチシズムが必要だ。だって、人生は素晴らしく、刺激的だと繰り返し言ってもらう必要がある。そして当然、みんなそれを少し疑わしいと思っている. (p41)

  • 地図と領土:同じくウェルベックのゴングール賞受賞作品.ばちばちに面白い.昨年ちらっと『セロトニン』冒頭をKindleで読んだときにはなんのこっちゃわからん小説だなと思ったのだけれど,アンテナの配置が換わったのかしら. link

  • 映画ちいかわ 人魚の島のひみつ:友人から『ぜひ!』と案内頂き,家族連れだらけのOSシネマの端っこでちんまり鑑賞してきました.ちいかわ完全未履修勢のわたしにとって,グロさ際立つ作品でした. link

  • Japonesa - Seu Jorge:先週水曜のサクラバシ919(ラジオ)で流れ,爆笑しながら聞きました.後半の焼きそば連呼,腹がちぎれるかと思った.

  • 夏が涼しいのはありがたいのだけれど,一抹の寂しさもある.今週から暑さがかえってくるようで、みなさまお体に気をつけて.

  • 何度ATOKに訂正されても「約定」=「やくてい」と入力してしまう私は,株式取引に向いていない.おとなしくETFを買っておきます.

  • 新発売Google Pixel Watch5のタグライン「AIが導く、もっといい自分」を信じられる人はどれだけいるんだろうか.信じている人がいるとして、この言葉はマーケティング上の”引き”があるのだろうか.AIと『より良い自分』を結びつけて考えている人はそれほど多くないのではないか.

  • コロンビアで大きな地震があり緊急事態宣言.震源地の近くには先住民族が暮らす集落が点在しており救助や状況把握が困難とのこと.アベラルド・デ・ラ・エスプリエラ新大統領は地震発生の3日前に就任,前政権からの移行プロセスを拒否したことで緊急対応の引継ぎがなされず現場は混乱が続いている.日本財団などが寄付を募集中.私も少額ですが寄付をしました. link

  • コンゴ共和国のエボラ出血熱での感染者4千人、死者2千人を超えている.コロナ禍の記憶が徐々に薄れ、感染症の脅威はほとんど語られなくなったけれど、それは厳然と存在している.彼らは突然,私たちの眼前に現れる. link

    This time is differentだね。 @米CDC
  • 今週はまるまる山梨滞在です.たくさん本を読み考え事をします.
    よい直感のタネを育ててきます.

お便りをお待ちしています。

Read the original on cobe.substack.com

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